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変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。
R8年7月 政府の清涼戦略に労働時間法制の運用見直しが盛り込まれる見通しです
R8年7月 経団連発「若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策」とは
R8年7月 同一労働同一賃金ガイドラインが改正されます
R8年7月 令和7年の労働災害発生状況・死亡者数は過去最少
R8年7月 高年齢者の熱中症対策と補助金活用
R8年7月 外国人労働者の職場定着に活用したい「人材確保等支援助成金・外国人労働者就労環境整備助成コース」
R8年7月 2026年に変わるiDeCoの改正ポイント
R8年7月「同一労働同一賃金」改正に対応した労働条件通知書のモデル様式が公表されました
R8年7月 産業医の辞任等に関する報告が義務化されます
◆労働時間法制をめぐる議論の今後
6月2日、政府の日本成長戦略会議の下に設置された労働市場改革分科会における労働時間法制等をめぐる議論の取りまとめが公表されました。
5月29日の上野厚生労働大臣の会見では、議論の結果に関して「労働時間規制について、(中略)夏以降の労働政策審議会において議論を行う予定」と発言があったところです。
◆取りまとめの内容について
裁量労働制の見直し等は今後の議論が待たれるところですが、36 協定の締結や柔軟な労働時間制の活用について、「労働基準監督署において、重大・悪質な事案に対しては厳正に対応しつつ、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意に則った指導が行われるよう速やかに見直す必要がある」とされました。
これを受け、今夏の成長戦略に労働基準監督署による指導の見直し等に関する内容が盛り込まれる見通しです。
◆なぜ見直しが?
分科会の第3回目にて、全国商工会連合会より、人手不足や時間外労働の上限規制への対応に苦慮しているとの声とともに、「『収入をもっと増やしたい』・『技能を修得したい』など健康確保と労使合意を大前提とし、労働者本人の希望を踏まえた労働時間管理も可能とする制度」や、変形労働時間制などが十分に活用できていないことを踏まえ、「届け出などの要件を柔軟化し、多様な地域、業種・業態の企業や労働者が効率的に業務や労働をできるような、柔軟な労働時間管理の運用」が要望されていました。
具体的な内容やいつから柔軟化が図られるのかなど、夏以降の情報に注目です。
【参考】
労働市場改革分科会
経団連は5月19日、企業による若年社員の育成や支援等の取組みに関する、5つの課題と対応策をまとめました(以下、「報告書」という)。
◆若年者を取り巻く状況の変化
若年層を取り巻く状況の変化について、若年労働力の減少・労働需給の逼迫、高水準の転職希望者比率などの外的要因と、キャリア志向の二分化や OJT・Off-JT 機会の減少などの内的要因に分けて整理しています。
◆活躍推進にあたっての5つの課題
近年顕在化し、若年社員のキャリア不安や早期離職を引き起こしている課題を、①リアリティ・ショックの発生、②成長機会の減少、③キャリアパスの不透明さ、④コミュニケーションの質的変化、⑤育成・マネジメントの行き詰まり、の5つに整理しています。
◆5つの課題への対応策
対応策として、①「日本型RJP」(注)とオンボーディング施策、②人材育成施策の再構築、③主体的なキャリア形成への支援、④タテ・ヨコ・ナナメによるコミュニケーションの活性化、⑤上司・管理職への支援・サポートを挙げ、企業事例を交えて解説しています。
(注)RJP(Realistic Job Preview)は、仕事内容や組織の魅力だけでなく課題や負の側面も含めありのままの情報を提供して、納得して応募した人を選考する採用手法。
◆政府の取組みと支援策
厚労省の支援策も、「キャリア形成」、「職業訓練・能力開発」、「就職・再就職」の3つの柱で紹介されています。
若年社員の活躍推進に “課題を感じている”企業は9割超に上ります(経団連調べ)。若年社員に限らず、組織全体が活性化する取組みを検討しましょう。
【参考】
報告書・若年社員の活躍推進における5つの課題と対応策
◆同一労働同一賃金ガイドラインとは
令和8年4月28日に同一労働同一賃金に係る改正省令・告示が公布され、改正同一労働同一賃金ガイドラインが令和8年10月1日から適用されます。このガイドラインは、正社員と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)との間で待遇差が存在する場合に、どのような待遇差が不合理、あるいは不合理でないのか、原則となる考え方や具体例、留意事項を示すものです。
◆ガイドライン改正のポイント
今般、裁判例の蓄積などを踏まえて記載が見直され、明確化や充実が図られているほか、新規に追加された内容もあります。特に、各種手当(退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当等)や福利厚生(夏季冬季休暇、褒賞等)について、具体的な考え方や例示が追加されています。
また、改正省令により、非正規雇用労働者を雇い入れた時の労働条件明示事項について、現行の明示事項に加え、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨の明示が追加されます。説明の際は、「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」により行います。
◆企業に求められる対応
企業においては、非正規雇用労働者からの説明請求への対応が一層重要となります。各種手当や福利厚生の支給基準の見直し、就業規則の点検、説明体制の整備が欠かせません。ガイドラインに基づき、厚生労働省が公表する関連書式やリーフレットも活用しながら、早めの確認と対応を進めましょう。
【参考】
同一労働同一賃金特集ページ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
厚労省が5月27日、令和7年の労働災害発生状況を公表しました。令和7年1月から12月までの、新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除いたデータが取りまとめられています。
◆死亡者数
労働災害による死亡者数(死亡災害報告をもとに、死亡者数を集計)は700人(前年比46人・6.2%減)と、過去最少となりました。
(1)業種別
建設業:214人(前年比18人・7.8%減)
製造業:115人(同27人・19.0%減)
陸上貨物運送事業:80人(同28人・25.9%減)
商業:61人(同6人・10.9%増)
(2)事故の型別
墜落・転落:186人(前年比2人・1.1%減)
交通事故(道路):126人(同3人・2.4%増)
はさまれ・巻き込まれ117人(同7人・6.4%増)
◆休業4日以上の死傷者数
事業者から提出される労働者死傷病報告をもとに集計した死傷者数は、135,333人(前年比385人・0.3%減)でした(通勤中に発生した災害の件数は含まれません)。
(1)業種別
製造業:26,371人(前年比305人・1.1%減)
商業:23,128人(同1,089人・4.9%増)
保健衛生業:19,291人(同424人・2.2%増)
陸上貨物運送事業:15,632人(同660人・4.1%減)
(2)事故の型別
転倒:37,195人(前年比817人・2.2%増)
腰痛等の「動作の反動・無理な動作」:22,166人(同52人・0.2%減)
墜落・転落:20,864人(同165人・0.8%増)
死亡者数は過去最少となったものの、休業4日以上の死傷者数は令和4年から横ばいとなっており、引き続き労働災害防止に向けた積極的な取組みが求められます。7月1日~7日の全国安全週間および6月1日~30日の準備期間を機に、体制を見直しましょう。
【参考】
令和7年の労働災害発生状況を公表|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73382.html
◆過去最多の死傷者数、高年齢者は特に注意
2025年の職場における熱中症による死傷者数は1,803人と、統計開始(2005年)以降最多になりました。年齢別では、25~29 歳の129人に対し、60~64歳は181人、65歳以上は278人と、高年齢者が多くなっています。加齢により体温調節機能や暑さの自覚が低下する高年齢者は熱中症を発症するリスクが高く、企業として積極的な安全配慮が求められます。
◆熱中症対策の義務化への対応
2025年6月からの改正労働安全衛生規則では、職場の熱中症対策が「義務」とされています。①体制整備、②手順作成、③関係者への周知の3つが重篤化を防止するために義務付けられ、違反には罰則の適用や業務停止命令の可能性もあります。そのため、予防対策として実効性のある対応が必要です。
具体的には、WBGT値(暑さ指数)の把握とそれに基づく作業環境の改善、作業負荷の軽減、休憩や水分補給の管理等が求められます。
◆エイジフレンドリー補助金の活用も有効
60歳以上の高年齢労働者の熱中症予防対策には、「エイジフレンドリー補助金(熱中症対策コース)」の活用が可能です。スポットクーラー、ミストファン、WBGT指数計、電動ファン付き作業服等の導入経費が、補助対象となります。
補助金の申請は事業者自身が行う必要があり、審査による要件確認や書類の準備には一定の時間を要しますし、実務対応も発生します。申請受付は2026年10月31日までですが、予算額に到達次第終了となるため、早めの検討が重要です。
【参考】
令和7年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73330.html
「令和8年度エイジフレンドリー補助金」
◆支給額
雇用保険の被保険者となる外国人を雇用し、以下の措置を導入するごとに20万円(上限80万円)
◆就業環境整備措置
期間(3カ月以上1年以内)を定めて計画を作成、労働局へ提出し、認定を受けた後に下記の措置(必須メニューに加え、選択メニュー①~③のいずれか)を実施して、支給申請を行います。
【必須メニュー】
・雇用労務責任者の選任…事業所ごとに選任し、外国人労働者への周知と1回以上の面談を実施する。
・就業規則等の多言語化…就業規則、労働協約、労働条件通知書、雇用契約書のいずれかを多言語化し、外国人労働者に周知する。
【選択メニュー】
①苦情・相談体制の整備…外国人労働者の母国語または使用するその他の言語により苦情・相談に応じる体制を新たに定める。
②一時帰国のための休暇制度…希望した場合に必要な有給休暇を取得できる制度を新たに定め、1年間に1回以上、連続5日以上の有給休暇を取得させる。
③社内マニュアル・標識類等の多言語化…社内マニュアル等を新たに多言語化し、外国人労働者に周知する。
その他、外国人雇用状況届出を適正に届け出ていることや、外国人労働者離職率が15%以下であることなどの要件があります。
厚生労働省ホームページでは、外国人労働者の雇用管理や労務管理に使える各種資料、モデル就業規則やさしい日本語版等が紹介されているので、参考にするとよいでしょう。
【参考】
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001682049.pdf
外国人労働者の人事・労務に関する支援ツールhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/tagengoyougosyu.html#%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86
個人型確定拠出年金「iDeCo」は長期的な資産形成を行うことを目的とした私的年金ですが、ルールが変わることも多いので、直近の改正をまとめます。
◆退職所得控除に関する「5年ルール」が「10年ルール」に(2026年1月1日より施行)
改正前は、先にiDeCoの給付金を一時金で受け取り、5年以上経過してから会社の退職一時金を受け取ると、掛金拠出期間と勤続期間で重複する期間の退職所得控除を、それぞれに使うことができました。改正後はこの「5年」が「10年」になり、受取りの間隔を10年以上空けない限り、重複期間の退職所得控除は1回しか使えないように調整されます。
なお、先に会社の退職一時金を受け取り、後でiDeCoの一時金を受け取る場合には、退職所得控除を二重に使うには20年以上の間隔を空ける必要があります。
◆加入可能年齢が「70歳未満」に拡大(2026年12月1日より施行予定)
iDeCoに加入できる年齢は原則20歳以上65歳未満でしたが、改正後は、70歳になるまで掛金の拠出が可能になります。ただし、iDeCoは公的年金の上乗せであるため、老齢基礎年金などの公的年金を受け取るようになると、掛金の拠出はできなくなります。
◆掛金の上限の引上げ(2026年12月1日より施行予定)
会社員・公務員の拠出限度額は月額2万円(企業年金がある場合は合計5.5万円)または2.3万円でしたが、改正後は6.2万円(企業年金がある場合は合計6.2万円)に引き上げられます。
自営業者・フリーランス等の拠出限度額は、国民年金基金と合算で月額6.8万円でしたが、7.5万円に引き上げられます。
【参考】
令和7年度税制改正の大綱
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2025/07taikou_01.htm?utm_source=chatgpt.com
令和8年12月からiDeCoがパワーアップします!
厚生労働省より、令和8年4月30日付けで通達「『労働条件通知書等の普及促進について』の一部改正について(基発0430第1号)」が公表されました。
今回の改正は、令和8年4月28日に公布された省令(令和8年厚生労働省令第87号)が、同年10月1日から施行されることに伴うものです。
◆主な改正内容
上記省令により、パートタイム労働者や有期雇用労働者を雇い入れる際、これまでの労働条件明示事項に加え、新たに「正社員等との待遇の相違の内容・理由について、説明を求めることができる」旨の明示が義務付けられます。派遣労働者の雇入れ時や派遣時の就業条件明示事項についても、同様に追加されます。
これらを踏まえ、労働条件通知書のモデル様式の「その他」欄に「・次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。」が追加され、部署名と担当者職氏名、連絡先を記載するようになっています。
なお、窓口が苦情等を含めた相談の受付先と同じ場合には、「同上」等と記載して差し支えありません。
詳細やモデル様式は、厚生労働省のウェブサイト等をご確認ください。
【参考】
「労働条件通知書等の普及促進について」の一部改正について(令和8年4月30日基発0430第1号)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260501K0090.pdf
(別添1)一般労働者用;常用、有期雇用型
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260501K0091.pdf
(別添1の2)無期転換後の労働条件
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260501K0092.pdf
(別添2)建設労働者用;常用、有期雇用型
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260501K0093.pdf
(別添3)林業労働者用;常用、有期雇用型
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260501K0094.pdf
(別添4)短時間労働者用;常用、有期雇用型
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260501K0095.pdf
(別添5)派遣労働者用;常用、有期雇用型
労働安全衛生規則の改正により、令和8年8月1日から事業者に対し、産業医の辞任、解任または退任(以下、「辞任等」という)があった場合に、所轄労働基準監督署への氏名や辞任年月日等の報告が義務付けられます。
◆改正の背景
常時使用労働者数50人以上の事業場には産業医を選任する義務があり、選任事由が発生した日(常時使用労働者数50人以上になった日、または前任者の辞任等が発生した日)から14日以内に選任しなければならず、違反は50万円以下の罰金に処されます。また、選任したときには遅滞なく所轄の労働基準監督署に報告しなければならないこととされています。
しかし、辞任等の変更があった場合には報告義務がなく、これまで、前任者の辞任後に後任者が選任されたか否かを把握できないケース等がありました。そこで新たに、辞任等の報告も義務付けることとなりました。ただし、新たな産業医の選任と前任者の辞任等を同時に報告した場合は、これまでと同様、辞任等の報告は必要ありません。
一方、常時使用労働者数が50人未満になり産業医の選任義務がなくなった場合の産業医の辞任等については、「報告を行うことが望ましい」とされています。
◆報告方法
辞任等の報告は、所定の様式「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/20.html)を使用し、所轄の労働基準監督署長に提出します。電子申請が原則ですが、当分の間は書面による報告も可能です。
【参考】
「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」(令和8年4月28日基発0428 第4号)
https://www.mhlw.go.jp/content/001700019.pdf
リーフレット「産業医による労働者の健康管理等を徹底しましょう」