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変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。
R3年11月 傷病手当金の支給期間が改正されます
R3年11月 人事院の民間企業勤務条件制度等調査結果から
R3年11月 令和2年度 監督指導による賃金不払残業の是正結果から
R3年11月 11月は「過労死等防止啓発月間」です
R3年11月 70歳までの継続雇用制度を考えるにあたって
R3年11月 コミュニケーションと職場環境が新入社員やりがい意識に大影響
◆傷病手当金とは
傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガの療養のため連続する3日間を含み4日以上仕事に就くことができず、給与支払いがない場合に、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
支給期間は、支給を開始した日から最長1年6カ月です。この1年6カ月には、復職し再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合の、復職した期間も含まれます。
◆改正により支給期間を通算化
令和4年1月1日から、この支給期間が通算化され、療養中に復職し再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合、復職期間を除いて支給期間がカウントされることとなります(具体的な支給期間の計算方法は、令和3年11月中に明らかになる見通しです)。
◆仕事と治療の両立をしやすくするための改正
通算化されることとなった理由は、がん治療など入退院を繰り返して療養する患者が柔軟に傷病手当金制度を利用できないとの問題点が指摘され、支給期間が通算化されている共済組合と取扱いを合わせるべき、などの意見もあり、見直されることとなったものです。
■両立支援に取り組む会社に対する支援
会社による仕事と治療の両立のための取組みとしては、新たに休暇制度を導入したり健康づくりのための制度を導入したりする等があり、こうした取組みが要件を満たす場合には、助成金の対象となる可能性があります。
【厚生労働省】
「社会保障審議会医療保険部会における議論の整理について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15749.html
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案概要」PDF
https://www.mhlw.go.jp/content/000733601.pdf
「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」PDF
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000780068.pdf
人事院は、令和2年10月1日現在における民間企業の労働時間、休業・休暇、福利厚生、災害補償法定外給付および退職管理等の諸制度を調査した結果を発表しました。概要をお知らせします。
◆業務災害及び通勤災害に対する法定外給付制度について
従業員が業務災害や通勤災害により死亡、あるいは障害が残った場合、法律に従った保険給付が行われますが、それとは別に企業が独自に給付する法定外給付について、制度が「ある」企業の割合は業務災害による死亡で56.2%、通勤災害による死亡で51.1%、業務災害による後遺障害で46.7%、通勤災害による後遺障害で42.5%でした。また、半数以上の企業が、給付額の決定方法は「一律」かつ「定額」としています。
◆休暇制度
正社員以外の有期雇用従業員がいる企業において、その有期雇用従業員が子の看護休暇または介護休暇を取る条件として、両休暇ともに「雇入れ日から6月以上経過」が最も多く(子の看護46.1%、介護42.1%)、週の所定労働日数については、「3日以上」が両休暇ともに48.3%、給与を「無給」とする企業割合は、子の看護で80.7%、介護で82.9%ありました。
◆在宅勤務(テレワーク)に対する経費の負担
正社員が在宅勤務を「行っている」企業の割合は33.3%、在宅勤務に対する経費を「負担している」企業割合は34.7%で、そのうち経費を「給与として支給」している企業は42.9%、「福利厚生費として支給」は7.9%となっています。
◆従業員の退職管理等の状況
定年制が「ある」企業の割合は99.5%で、そのうち定年年齢が「60歳」の割合は81.8%。定年制がある企業のうち継続雇用制度がある割合は96.5%で、そのうちいったん退職した従業員を再度雇用する「再雇用制度」がある企業割合は95.7%という結果がでています。
【人事院「令和2年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」PDF】
https://www.jinji.go.jp/kisya/2109/r03akimincho_bessi.pdf
◆支払われた割増賃金の平均額 1企業当たり658万円
厚生労働省は、「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」として、労働基準監督署が監督指導を行い、令和2年度(令和2年4月から令和3年3月まで)に不払いとなっていた割増賃金が支払われたもので、支払額が1企業当たり合計100万円以上である事案を取りまとめて公表しました。
これによれば、是正企業数1,062企業(前年度比549企業の減)、対象労働者数は6万5,395人(同1万3,322人の減)で、支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり658万円、労働者1人当たり11 万円にのぼりました。
◆割増賃金合計額は前年度比28 億5,454 万円減
業種別の企業数で比較すると、製造業が215企業(20.2%)、商業が190企業(17.9%)、保健衛生業が125企業(11.8%)と上位を占めています。支払われた割増賃金合計額 は69億8,614万円で前年度比28 億5,454万円の減と大幅に減少していますが、コロナ禍における様々な影響は当然無視できないところですので、今後どのような傾向となるかは引き続き注視する必要があります。
◆改めて労働時間管理の確認を
厚生労働省は、あわせて「賃金不払残業の解消のための取組事例」についても紹介しています。そこでは企業が実施した解消策として、①代表取締役等からの賃金不払残業解消に関するメッセージ(労働時間の正しい記録、未払賃金の申告)の発信、②管理職に対する研修会の実施、③定期的な実態調査等が挙げられています。
厚生労働省では、引き続き賃金不払残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとしています。企業においても改めて適切な労働時間管理方法や自社の現況については確認したいところです。
【厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21200.html
◆毎年11月は過労死等防止啓発月間
厚生労働省では、11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死等をなくすためにシンポジウムやキャンペーンなどの取組みを行っています。月間中は、各都道府県において「過労死等防止対策推進シンポジウム」を行うほか、「過重労働解消キャンペーン」として、長時間労働の削減や賃金不払い残業の解消などに向けた重点的な監督指導やセミナーの開催、土曜日に過重労働等に関する相談を無料で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」等を行うとしています。
◆過労死等とは?
過労死等とは、過労死等防止対策推進法第2条により、以下の通り定義づけられています。
●業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
●業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
●死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
◆事業主が取り組むべきこと
職場で過労死等が発生すると、労働者やその家族の人生設計を大きく狂わせてしまうことはもちろん、訴訟となった際の企業への影響は計り知れません。対策に取り組むことが、労働者と企業を守ることにつながります。専門家の力や公的資料等を活用しながら、以下の事項について、積極的に取り組んでいきましょう。
●長時間労働の削減
●ワーク・ライフ・バランスのとれた職場環境づくり
●メンタルヘルス対策
●ハラスメント防止
●相談窓口の周知 など
【厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20865.html
◆70歳までの就業機会の確保
高年齢者雇用安定法の改正により、2021年4月から70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となっています。この対応として、70歳までの継続雇用制度を導入する企業も多いでしょう。ただ、これまでの65歳までの継続雇用制度とは違った点も考慮に入れる必要がありそうです。
◆体力と意欲
年齢と共に身体機能は低下します。65歳から70歳に近づくにつれ、関節性疾患やガンなどによる受療率はかなり高まるとされています。また、身体機能や健康状態の個人差も大きくなってくる年代です。
65歳までの継続雇用制度では、定年後の業務内容として、60歳時(定年時)と同じとするケースが多いようですが、改正法へ対応を考えるにあたって、単純に年齢を70歳までにすればよいという訳にはいかないでしょう。
また、定年前と同じ業務内容としているケースでは、定年後の処遇と職務を十分検討していないケースも多く、退職時期だけが先送りになったような恰好になれば、労働者の仕事への意欲や満足感も低下してしまいかねません。
◆他人事ではなく
継続雇用を機に、後進の育成など企業が期待する業務を担当してもらう、専門性を生かした業務を継続してもらうなど、定年後の処遇の変化と併せて、単純に年齢で区切るのではなく個人に合わせた継続雇用制度の設計が求められます。そのためには、若い世代も巻き込んだ制度設計・見直しが必要となるでしょう。
◆マルチジョブホルダー制度が来年からスタート
65歳以上の労働者に関する新しい制度が、来年1月から始まります。複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して所定の要件を満たす場合に、労働者本人がハローワークへの申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者となることができる制度です。
企業は、労働者からの依頼に基づき、手続きに必要な証明を行う必要がありますので、厚生労働省のHPなどで事前に確認しておくことをお勧めします。
【厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度について」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html
【同「Q&A~雇用保険マルチジョブホルダー制度~」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508_00002.html
◆コロナ禍で新入社員の「やりがい」意識は低下
マイナビが9月30日に発表した、2018年~2021年度入社のビジネスパーソンを対象にした「新入社員のエンゲージメントと職場環境に関する調査」の結果によると、新入社員が仕事の「やりがい」を「感じている」と答えたのは2020年度入社が70.8%で、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度入社(76.4%)より5.6ポイント減少していることがわかりました。企業側の新入社員の受け入れ態勢が十分に整っていなかったことが、仕事へのやりがいに影響したと考えられるとしています。
◆先輩社員とのコミュニケーション、職場環境が「仕事のやりがい」や「会社への好感度」に影響
コミュニケーション頻度と仕事のやりがいの影響度・好感度では、「やりがいを感じる」人ほど、上司や先輩社員とのコミュニケーションが「あった(71.4%)」と回答した割合が高く、「やりがいを感じない」人はコミュニケーションが「なかった(77.2%)」という回答が多い結果となりました。会社・部署への好感度も、コミュニケーションの頻度が高いほど高く、頻度が低いほど下がっていることがわかりました。
また、「業務を行ううえで、職場のツールや備品などの業務環境が整っているか」の問いに対しては、「やりがいを感じる」と回答した社員は、業務環境が「整っている」が80.7%と高かったのに対し、「やりがいを感じない」と回答した社員は31.5%と低く、業務環境もやりがいに影響していました。
テレワークの浸透や働き方の多様化が進む中、コミュニケーションの多寡や職場環境の整備は、新入社員定着への重要な課題だと言えるでしょう。
【マイナビBiz「新入社員のエンゲージメントと職場環境に関する調査」】
https://www.mynavi.jp/news/2021/09/post_32002.html