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変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。
R7年11月 協会けんぽの手続きに電子申請が導入されます
R7年11月 「中高年の活躍支援」特設サイトがオープンしました
R7年11月 高年齢労働者の労働災害防止対策
R7年11月 「令和7年版 労働経済白書」が公表されました
R7年11月 リ・スキリング等教育訓練支援融資が開始されます
R7年11月 インフルエンザ予防接種を福利厚生で行う際の留意点
R7年11月 外国人労働者に人事・労務を説明する際役立つ支援ツール
R7年11月 健康保険被扶養者認定は労働契約内容で年間収入を判定
R7年11月 2026年1月から「下請法」は「取適法」になります
◆電子申請の導入
9月10日、協会けんぽは、電子申請サイトの開設と「けんぽアプリ」のリリースを行い、マイナンバーカードを利用して本人確認のうえ、手続きを行う仕組みを準備中であると公表しました。
◆電子申請による手続きイメージ
資料によれば、傷病手当金や出産手当金、出産育児金、高額療養費などの申請書が対象となっています。マイナ保険証を持っていない被保険者向けに紙の保険証に代わって発行される資格確認書の交付申請書も、対象となっています。
手続きフローとしては、協会ホームページまたは「けんぽアプリ」から電子申請サイトにログインして希望する申請書を選択し、申請情報を入力の上、必要な添付書類は電子ファイルでアップロードするというものが示されています。審査に関する通知もシステム上で行われ、確認画面にステータスを表示することとなっています。
ただし、示されているのは被保険者自身が手続きを行うフローのみのため、会社の担当者や手続きの委託を受ける社会保険労務士がどのように手続きを行うのかは、現時点で明らかにされていません。
◆いつから導入される?
資料によれば、令和8年1月からのサービス開始が予定されており、電子申請のほかに健康づくりに関するコンテンツ配信などが予定されています。
その後、検証の上、令和10年1月には「健診予約」や「デジタルな健康手帳」等、加入者の利便性向上に資するプッシュ型の機能の実装と入社と同時に自動的にアプリをインストールするような仕組みを構築するとされていますが、あくまで構想とされています。
【全国健康保険協会「第137回全国健康保険協会運営委員会資料」】
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat720/r07/002/250910/
◆「中高年の活躍支援」とは
厚生労働省は、バブル崩壊後の1990~2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を迎えた世代(就職氷河期世代)が50代半ばに差し掛かっていることを踏まえ、中高年層にも間口を広げ、これまでの「就職氷河期世代活躍支援」特設サイトを、「中高年の活躍支援」特設サイトとしてリニューアルオープンしました。その特徴と活躍支援の概要をまとめます。
◆お悩み別サポート支援
サイト内において、下記のような不安材料ごとにサポート窓口を設けています(Chatと相談&検索もできます)。
1 経済面で将来に不安がある(ハローワーク)
・すぐに働きたいけどどこで求人を探せばよいか
・スキルアップしたい
・自分のキャリアを相談したい
・介護と仕事を両立したい
2 社会とのつながりに不安を抱えている(サポステ)
・これまでの職場でうまくいかず、自信が持てない
・悩みを誰にも話せずひとりで抱えていた
・フルタイムで働くことに不安があるが、挑戦してみたい
3 家計の状況や家族介護に不安がある(各種支援機関)
・家計のやりくりが難しく、生活が苦しい
・定年を過ぎても働き続けたい
・年金制度について知りたい
・家族介護に直面している方への支援を知りたい
◆事業主ができること
雇用する側としては、中高年の積極的な採用や人材育成をするにあたり、以下のような助成金が利用できます。
・トライアル雇用助成金
・特定求職者雇用開発助成金
・人材開発支援助成金
・キャリアアップ助成金
・両立支援等助成金
・65歳超雇用推進助成金
【厚生労働省「中高年の活躍支援」特設サイト】
https://www.mhlw.go.jp/shushoku_hyogaki_shien/
◆高齢者の労働災害防止の推進
令和7年に改正された労働安全衛生法では、「高年齢労働者の労働災害防止の努力義務化」が盛り込まれています。この改正では、国が当該措置に関する指針を公表することとされており、現在開催されている「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」で取り上げられています。
◆ガイドラインが指針に格上げ
高年齢労働者の労働災害防止対策としては、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」(令和2年3月策定)が公表され、取組みが促されてきました。今般の指針策定の方針としては、法的根拠のない現行のガイドラインについて、法律に基づく指針に格上げし、現行のガイドラインを廃止するとしています。
現行のガイドラインの項目や内容が基本とされるようですが、新たな追加・修正項目として以下のような点が挙げられています。
・経営トップによる方針表明及び体制整備
・危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
・高年齢労働者の体力の把握方法
・高年齢労働者の体力に応じた対応
・安全衛生教育
◆早めの取組みを
検討会の資料によれば、企業が「高年齢労働者の労働災害防止対策に取り組んでいない理由」として、「自社の60歳以上の高年齢労働者は健康である」と回答した企業が約半数を占めたそうです。身体機能の低下による労働災害のリスクへの理解が進んでいないことが指摘されています。
高齢化が加速する中、企業としては、高年齢労働者の労働災害対策は避けては通れない課題です。助成金等、国による支援も活用しつつ、早めの取組みを検討したいところです。
【厚生労働省「第2回「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」資料」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63946.html
厚生労働省は「令和7年版 労働経済の分析」(労働経済白書)を公表しました。労働経済白書は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書です。今回の白書の主なポイントをご紹介します。
◆労働経済の推移と特徴
2024年の雇用情勢は昨年に続き改善し、失業率や求人倍率は横ばいでした。労働力人口や就業者数は過去最高を記録し、現金給与総額は4年連続で増加、実質賃金も一般・パートともにマイナスを脱しました。
◆持続的な経済成長に向けた課題
日本では1990年代以降、実質労働生産性の実質GDP成長率への寄与が低下しています。無形資産投資、特に非製造業のソフトウェア投資が米欧に比べて低迷しており、AIやソフトウェアによる業務効率化、省力化が急務です。医療・福祉・サービス業など、高齢化で需要が増える分野の生産性向上も重要課題です。
◆社会インフラを支える職業の人材確保に向けて
医療・福祉、保安、運輸、販売など生活に直結する職業(社会インフラ関連職)の人材不足は経済活動に影響します。これらの職種を支えるため、スキルや経験に応じて段階的に賃金が上がる「キャリアラダー」の導入が必要です。
◆企業と労働者の関係性の変化や労働者の意識変化に対応した雇用管理
転職者が増え、生え抜き社員の割合は減少しています。若年層ほど賃金や自己成長を重視し、働きやすい職場への継続就業希望が高い傾向があります。企業は賃金や福利厚生だけでなく、賃金以外の労働条件の改善や働きやすい職場環境整備など、多様な働き方を可能とする柔軟な雇用管理を行うことが重要です。
【厚生労働省「「令和7年版 労働経済の分析」を公表します」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63870.html
厚生労働省は、「リ・スキリング等教育訓練支援融資」を開始すると発表しました。スキルアップ等を目指す人が生活面の不安なく訓練を受けることができるよう、「教育訓練費用」と「教育訓練期間中の生活費」を融資するもので、訓練を修了した人が一定の要件を満たした場合、債務残高の返済が一部免除されます。
◆融資対象者(抜粋)
・ハローワークに求職の申し込みをしていること
・雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
・労働の意思と能力があること
・職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
・過去に3年以上の就業経験があること
・キャリアコンサルティングを受けて、ジョブ・カードを作成していること
・融資申込時に18歳以上、融資開始時に66歳未満であること
◆対象となる教育訓練
(1)訓練期間が1カ月以上4年以内のもの
(2)以下のいずれかに当てはまるもの
1.学校教育法に基づく大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校または各種学校が提供する教育訓練
2.厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を実施している法人等が提供する教育訓練
3.求職者支援訓練または公共職業訓練等
◆返済の一部免除
・融資申込時点での融資対象者本人の年収が500万円未満であること
・求職者支援訓練、公共職業訓練または教育訓練給付金の指定講座を修了すること
・訓練終了日の翌日から1年以内に雇用保険被保険者として就職し、1年以上継続的に雇用されること
・訓練修了後の賃金が訓練開始前の賃金と比較して5%以上上昇していること
◆融資内容
・実施機関:労働金庫
・上限額:教育訓練費用として年間120万円、生活費として年間120万円(最大2年間分)
・融資利率:年利率:2%(固定金利、信用保証率年0.5%を含む)
企業が申請できるものではありませんが、今後、この融資を利用中の求職者の面接をすることもあるかもしれないので知っておくとよいでしょう。
【厚生労働省「リ・スキリング等教育訓練支援融資」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/reskillingtou_shienyushi.html
◆インフルエンザが流行シーズンに突入
厚生労働省は3日、令和7年第39週の定点当たり報告数が1.00を上回り、インフルエンザが流行シーズンに入ったことを発表しました。例年より2カ月ほど流行入りが早いことや、昨年の報告数が統計史上最多となった原因として、ワクチン接種率の低下が指摘されていることから、早めの予防接種を推奨することが望ましいと考えられます。
◆インフルエンザワクチンについて
毎年の予防接種では、国内・国外の動向を鑑みて流行すると予測された型のワクチンが使用されます。今年度から、日本で使用されるワクチンが4価から3価へと変更されました。これは世界的に検出されていないウイルス株であるB/山形系統を除くとしたWHOの方針に基づいた決定です。インフルエンザワクチンの研究も進んでおり、昨年に製造販売が承認されたワクチンもあるので、専門家と相談して予防接種に使用するワクチンを選択しましょう。
◆留意点
予防接種の費用を会社で負担した場合、著しく高額ではなく、業務上必要であり、従業員全員を対象としている場合は福利厚生費として経理処理できます。
しかし、予防接種を強制することはできないことに注意が必要です。インフルエンザ予防接種は法的な強制力がなく、会社が接種を強制することはパワハラ問題に繋がりかねません。また、アレルギーや既往症等による副反応のリスクもあるため、推奨制度を作成する場合はパワハラ防止の周知を含めたトラブル対策を講じましょう。
コロナウイルス等の他の感染症も警戒する必要もありますが、マスクの着用や手洗いといった生活習慣による予防にも限界があります。感染による業務停滞を防ぐには、会社がインフルエンザ予防接種を推奨することも重要です。
【厚生労働省「インフルエンザに関する報道発表資料2025/2026シーズン」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00023.html
日本の法制度や雇用慣行は外国人労働者にとっては馴染みのないことも少なくありません。そのため、厚生労働省から、職場のルールを理由や背景も含めて説明し、理解を深めてもらうことを目的とした支援ツールが出されています。
◆『外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集』
採用、賃金、労働時間といった9つのテーマをあげ、雇用管理で実際に想定される場面ごとに、①外国人社員に説明する前に読んで理解しておくとよいポイント、②実際に外国人の方にそのまま話したり見せたりできるよう「やさしい日本語」による説明の例が紹介されています。例えば、採用後に労働者が提出する書類について、「日本では、あなたに代わって会社が税金や保険の計算をします。あなたのためにしますから、必要な情報を会社に教えてください。」とルビつきで示されています。
◆雇用管理に役立つ多言語用語集
人事・労務の場面でよく使用する労働関係、社会保険関係の用語約420語について、定義・例文を検索できる用語集です。やさしい日本語のほか、9言語(英語、韓国語、中国語(簡・繁)、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ポルトガル語、スペイン語、インドネシア語、カンボジア語、タイ語、ミャンマー語、モンゴル語)に対応しています。
就業規則などを外国人労働者に説明する際、理解が難しそうな用語などを検索して、翻訳を提示したり、外国人社員本人が、人事・労務用語の入社前の学習や辞書として活用したりすることが想定されています。
◆モデル就業規則ほか
厚生労働省のモデル就業規則は外国語版も出されています。そのほか、日本国内で働く外国人の方に向けた「労働条件ハンドブック」や外国人労働者の労災防止に役立つ教材、資料も整備されています。
【厚生労働省「外国人の方に人事・労務を説明する際にお困りではないですか?」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/tagengoyougosyu.html
【厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html
健康保険の被扶養者としての届出に係る者(以下「認定対象者」という。)の年間収入については、認定対象者の過去の収入、現時点の収入または将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入の見込みにより判定されていましたが、令和8年4月からは、就業調整対策の観点から、被扶養者認定の予見可能性を高めるため、次のとおり、労働契約段階で見込まれる収入を用いて被扶養者の認定を行うこととされました。
◆労働契約で定められた賃金(労働基準法第11条に規定される賃金をいい、諸手当および賞与も含まれる。)から見込まれる年間収入が130万円(認定対象者が60歳以上の者である場合または概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては、180万円。認定対象者(被保険者の配偶者を除く。)が19歳以上23歳未満である場合にあっては150万円)未満であり、かつ、他の収入が見込まれず、
(1) 認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合には、被保険者の年間収入の2分の1未満であると認められる場合
(2) 認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合には、被保険者からの援助に依る収入額より少ない場合
には、原則として、被扶養者に該当するものとして取り扱う。
◆労働契約の内容によって被扶養者の認定を行う場合は、労働基準法第15条の規定に基づき交付される「労働条件通知書」(以下「通知書」という。)等の労働契約の内容が分かる書類の添付および当該認定対象者に「給与収入のみである」旨の申立てを求めることにより確認する。具体的には、通知書等の賃金を確認し、年間収入が130万円未満(一定の場合は180万円または150万円未満)である場合には、原則として被扶養者として取り扱う。なお、労働契約の更新が行われた場合や労働条件に変更があった場合(以下「条件変更」という。)には、当該内容に基づき被扶養者に係る確認を実施することとし、条件変更の都度、当該内容が分かる書面等の提出を求める。
【厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0060.pdf
今年5月に「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」が可決・成立し、2026年1月1日から施行となります。
この改正により、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が抜本的に見直され、法律名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:「取適法」)に変更となります。
◆用語の変更
「下請」や「親事業者」という用語が上下関係を連想させることから、発注者と受注者の対等な関係づくりを促すことなどを目的として、以下の用語が変更となります。
・下請代金→製造委託等代金
・下請事業者→中小受託事業者
・親事業者→委託事業者
◆適用対象の拡大
従来の資本金基準に加え、「従業員数基準」(300人、100人)が追加され、規制および保護の対象が拡充されます。また、適用対象となる取引に、荷主から運送事業者への運送委託(特定運送委託)が追加されます。
◆禁止行為の追加
これまでは「買いたたき」規制が行われてきましたが、「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止されます。
また、政府が2027年3月末までに約束手形や小切手の利用を廃止する方針であるため、「手形払」が禁止されるとともに、その他の支払手段(電子記録債権等)についても、支払期日までに代金相当額満額を得ることが困難なものが禁止されます。
その他の改正事項や詳しい改正内容については、下記の公正取引員会のリーフレットやガイドブックをご確認ください。
【公正取引員会リーフレット「2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!」】
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
【公正取引員会 中小受託取引適正化法ガイドブック「「下請法」は「取適法」へ!」】
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf