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人事労務トラブルの予防、また起きてしまったときの対応策の検討には、過去の裁判事例の参照が不可欠です
人事労務に関するトラブル解決の現場では、労働基準法をはじめとした労働法に基づき対応策を検討することになります。ただ複雑に入り組んだ問題は、法律の条文を読んだだけで判断できるわけではありません。
例えば、解雇について労働基準法では、30日前の予告または、平均賃金30日分の解雇予告手当の支払いを義務付ける手続きを定めるのみですが、労働契約法では、解雇は、客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要と定められています。
では実際に企業が解雇の問題に直面したとき、目の前の解雇が客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当なものかどうかを判断するには、過去に同様なケースで争われた裁判の事例の内容を、照らし合わせて検討するしかありません。
ここでは、過去の人事労務の様々な分野で起こされた裁判内容を整理して、ご紹介をしていきます。
就業規則の内容が、合理的な労働条件を定めているものであれば、法的規範性が認められ、当該事業場の労働者は、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないとされた判決。
B社が、就業規則の変更により、55歳の定年を定めた(注)昭和32年当時)ことにより、すでに定年年齢を超えていた社員Aに対して、退職を命ずる解雇通知をしたところ、社員Aが同意をしていない就業規則の無効を求めてB社を訴えたもの。
【経緯】
社員A 昭和20年9月に入社。入社時には、定年を定める就業規則は無かった。
昭和32年4月 定年を従業員は50歳、主任以上の職にある者は55歳とする就業規則施行。
この労働条件を定型的に定めた就業規則は、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、その法的規範性が認められるに至っている(民法92条参照)ものということができる。
新たな就業規則の作成又は変更によつて、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、労働条件の集合的処理、統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいつて、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。
定年制は、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織および運営の適正化のために行なわれるものであつて、一般的にいつて、不合理な制度とは云えない。
本件就業規則についても、新たに設けられた五五歳という定年は、わが国の実情に照らし、かつ、B社の一般職種の労働者の定年が五〇歳と定められていることの比較からいつても、低いとはいえない。
本件就業規則変更には、必ずしも十分とはいえないにしても、再雇用の特則が設けられ、社員Aに対しても、その解雇後引き続き嘱託として、採用する旨の再雇用の意思表示がされている。また、B社の中堅幹部の多くは、本件就業規則条変更を、後進に道を譲るためのやむを得ないものであるとして、この変更を認めている。
以上の事実を総合すれば、本件就業規則変更は、決して不合理なものということはできず、当該変更によつて解雇されることになる労働者に対して、本件の就業規則変更が、信義則違反ないし権利濫用と認めることもできないから、社員Aは、本件就業規則変更の適用を拒否することができない。
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基金から脱退について、代議員会で否決された基金加入企業が脱退の自由を争って、基金を訴えた事例。このケースについては、加入企業の脱退を認める内容の判決結果。
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退職金規程に記載された基金からの上乗せ支給記載(外枠扱い)事例で、基金解散により上乗せ支給が無くなっても、会社に代償分の支払い義務はないとされた事例
H13年2月 A会社厚生年金基金解散
H14年9月 A社会社更生手続き開始
*A社の退職金規程
従業員で満2年以上勤務した者が退職したときは、退職金を支給する。
②従業員で満2年以上勤務した者が退職したときは、前項の退職金のほかに「A社厚生年金基金規約」の定めると
ころにより退職年金を支給する。
以上から、A社退職金規程の内容は、A社が基金規約に基づく給付と同じ内容を約束したものではなく、単に従業員が基金規約に基づき給付を受ける権利があることを規定したにすぎない。基金設立時の動機が、退職金の基金への一部移行であったとしても、基金がA社と別法人であり、独立して基金規約を運用するものである以上、基金の給付が行われなくても、当然にA社がその債務を負担するということにはならない。