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変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。
H27年7月 東京労働局が公表した労基法・最賃法違反による送検事例
H27年7月 「テレワーク」実施企業の現状と課題は?
H27年7月 6/29スタート!協会けんぽの「届書・申請書作成支援サービス」
H27年7月 「第三次産業」における労災発生状況の特徴は?
H27年7月 企業のマイナンバー対応の現状と内閣府公表リーフレット
H27年7月 厚労省が「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を公開
東京労働局から「平成 26年度司法処理状況」が発表されましたが、これによると1年間(平成26年4月~平成27年3月)の間に、東京労働局と管下の18労働基準監督署・支署が東京地方検察庁へ送検した司法事件は54件(前年度比4件減少)だったそうです。
業種別では、建設業(22件)、製造業(9件)、接客業(5件)が上位を占め、違反事項別では、賃金・退職金不払(17件)、死亡災害等を契機とした危険防止措置義務違反(12件)、労災かくしが(11件)が上位を占めました。
以下では、東京労働局が公表した送検事例のうち、労働基準法・最低賃金法違反に関する事例をご紹介します。
◆違反事例(1)
託児所を営むA社は、労働者Bの平成24年1月分賃金(17,250円)および労働者Cの同年2月分賃金(80,690円)の合計97,940円を所定の各賃金支払期日である同年2月29日、同年4月4日に全額支払わず、もって法で定める最低賃金を支払わなかった。
労働者14名が不払賃金(合計約221万6,000円)の行政指導による救済を求め労働基準監督署に申告に及んでいたが、 A社は労働基準監督署の行政指導に従わなかった。
A社の代表者は再三の出頭要求に応じなかったことなどから、逮捕のうえ、送検された。
◆違反事例(2)
パン製造販売業を営む会社のパートタイム労働者3名(時給900円~950円、1日の所定労働時間6時間)に対し、平成25 年12月1日から同月31 日までの間、最長で月 139 時間に達する時間外労働を行わせ、もって時間外労働協定の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていた。
また、同期間、本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のち3割程度しか支払っていなかった(1人当たり最大で約11 万円/月の時間外手当不払が発生していた)。
◆労働局の今後の方針
同労働局では、過重労働による健康障害を発生させた企業等であって違法な長時間労働を繰り返すなど「重大・悪質な労働基準法違反」の事案に対しては、積極的に捜査を行い、送検手続をとる方針とのことです。
独立行政法人労働政策研究・研修機構から、「情報通信機器を利用した多様な働き方の実態に関する調査」の結果が公表されました。
近年、「テレワーク」(情報通信技術を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)という言葉を耳にすることも多いかと思いますが、「会社の制度として実施」している割合が3.5%、「上司の裁量・習慣として実施」を含むと13.2%となり、約1割の企業でテレワークを実施しているという結果となりました。
◆実施の目的は?
実施の目的ですが、終日在宅勤務では「家庭生活を両立させる従業員への対応」が50.9%と最も多く、「定型的業務の効率・生産性の向上」「従業員の移動時間の短縮・効率化」がともに43.9%で続いています。
1日の一部在宅勤務では、「従業員の移動時間の短縮・効率化」(55.1%)、「家庭生活を両立させる従業員への対応」(46.9%)。モバイルワークでは、「定型的業務の効率・生産性の向上」(62.6%)、「従業員の移動時間の短縮・効率化」(61.9%)となっています。
◆就業場所・勤務時間管理は?
主な就業場所は、終日在宅勤務・1日の一部在宅勤務では「労働者の自宅」(ともに9割以上)が多く、モバイルワークでは「本社以外の他の事業所」(64.7%)、「移動中の交通機関の中や駅」(64.1%)となっています。
労働時間管理としては、終日在宅勤務・1日の一部在宅勤務で「通常の労働時間制度」(68.4%、64.7%)、次いで「フレックスタイム制」(29.8%、35.3%)となっています。モバイルワークでは「通常の労働時間制度」(73%)、「事業場外みなし労働」(30.9%)となります。
◆問題点・課題点は?
問題点は、終日在宅勤務では「進捗状況などの管理が難しい」(36.4%)、「労働時間の管理が難しい」(30.9%)、「コミュニケーションに問題」「情報セキュリティの確保に問題」(各27.3%)、「評価が難しい」(18.2%)となっています。1日の一部在宅勤務では「労働時間の管理が難しい」(42%)、「コミュニケーションに問題」「情報セキュリティの確保に問題」(各28%)となり、モバイルワークでは、「情報セキュリティの確保に問題」(42.3%)、「労働時間の管理が難しい」(40.3%)、「機器のコストがかかる」(25.5%)となっています。
このように課題も多いですが、今後の展望として、「現状のレベルで維持していきたい」(終日46.4%、一部44.2%、モバイル56.61%)、「拡充していきたい」(終日39.3%、一部36.5%、モバイル23.9%)となっており、テレワークは今後さらに増えていくと思われます。
2014年7月より、協会けんぽでは各種健康保険給付の支給申請書、保険証再交付申請書、任意継続に関する届書等を変更し、現在、旧様式での申請の場合には給付金の支払いの遅延につながることから、ホームページから様式をダウンロード・印刷のうえ、新様式での申請を促しています(印刷できない場合は加入する支部から送ってもらうことも可能)。
この新様式が掲載されているページには、記入例や記入上のポイントも提供されていますので、間違いのない申請実務を進めるうえで参考になります。
さらに、6月29日(月)から、より便利に申請することができるよう、「届書・申請書作成支援サービス」がスタートします。
◆新サービスの利用方法
新サービスでは、協会けんぽのホームページにアクセスし、申請書のデータを呼び出して画面に表示される申請書に直接必要事項を入力・印刷して、申請書を作成することができます。
入力する項目に関する説明を参照しながら入力できるようになっていますので、誤入力を防ぐことができます。また、記入漏れ等も自動でチェックしてくれますので、誤入力・記入漏れによる再提出といったムダを省くこともできます。
申請書に必要事項を入力したら、印刷して加入する協会けんぽの支部に提出します。郵送による提出も可能です。
◆新サービス対応の申請書
現在、新サービスに対応する申請書として掲げられているのは、各種健康保険給付の支給申請書、保険証再交付申請書、任意継続に関する届書等です。詳しくは協会けんぽのホームページでご確認ください。
申請書のご入力や記入漏れによって給付の支払いが遅れたりすると、事務のムダが発生するだけでなく、従業員の方にも影響を及ぼすこととなります。
正確に申請実務を進めるためにも、この新サービスを利用されてはいかがでしょうか。
厚生労働省から、「第三次産業における労働災害発生状況の概要(平成26年)」が発表されました。この中から特徴的な傾向について取り上げます。
◆小売業
労働災害は平成21年より増加傾向にあり、平成26年は13,365件(前年比4%増)でした。
事故のパターンとしては、「転倒」が多く(34%)、次いで「動作の反動・無理な動作」(13%)となっており、これだけでほぼ半数を占めています。転倒災害の多くは9~11時台に発生しています。
また、経験年数3年未満の死傷者が全体の45%を占め、50歳以上の災害が約7割を占め、かつ年々増加傾向にあります。さらに、休業見込が1月以上の災害が約6割となっています。
◆社会福祉施設
労働災害が年々急増しており(6年間で1.5倍)、平成26年は7,224件(前年比8%増)となりました。小売業と同様、転倒災害が多く(31%)、9~11時台に発生しており、50歳以上の災害が約7割を占めています。
また、業種の特徴として、介護等に伴う「動作の反動・無理な動作」による災害が34%を占めています。特徴的な、「腰痛」の発生件数は年々増加しており、平成26年は1,023件(前年比3%増)となりました。
◆飲食店
平成26年は4,477件(前年比1%増)ですが、年々増加しています。ここでも「転倒」が28%を占め、続いて職種柄か「切れ・こすれ」(24%)、「高温・低温物との接触」(17%)が続いています。
また、30歳未満の死傷者数が全体の3分の1を占め、9~12時の作業になれていない時間と繁忙時間となる18~20時に発生しやすい傾向にあります。さらにここでも、転倒災害は9~11時台に多く発生し、50歳以上の災害が約6割を占めています。
◆高年齢労働者の災害防止が重要になる
近年、転倒による労働災害が急増している背景には、労働者の高年齢化があります。今回の発生状況を見ても、50歳以上の転倒によるものが目立っており、骨盤・大腿の骨折等により休業日数が長くなることが多いです。
第三次産業では、製造業等に比べると重篤な災害が少ないということから、現場の安全性に対して意識がおろそかになってしまう傾向にありますが、これから労働力人口の一層の高年齢化が見込まれる中、高年齢労働者の転倒災害の防止は一層重要な経営事項になるでしょう。
本年10月に迫ったマイナンバーの通知ですが、最近では新聞やテレビなどでもマイナンバー制度開始の話題が取り上げられることが多くなってきました。企業にも早めの対応が求められているところです。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会が発表したマイナンバー制度に対する企業の対応状況に関するアンケート結果(回答期間:2015年3月16日~5月20日、回答数:3,386名)によると、2016年1月の制度開始に向けた対応について、「既に取り組んでいる」(3%)と「計画中」(28%)の回答は計31%にとどまり、大半の企業が未着手という結果になったそうです。
◆中小企業、東京以外の企業では準備が遅れている
規模別・地域別で比べてみると、従業員数301人以上の企業、東京地域の企業では約半数が対応に着手し始めているのに対し、100人未満、東京以外の企業では準備が遅れているという結果となっています。これは地方開催のセミナー等が少なく、情報入手が困難という状況によるところも大きいと考えられるようです。
また、未着手の理由としては「何をすべきか分からない」が41%、「制度自体が分からない」が7%となるなど、マイナンバーへの理解がまだまだ進んでいないことがわかります。
◆内閣府が公表したマイナンバーに関するリーフレット
国でも「社会保障・税番号制度ホームページ」としてマイナンバーに関するページを各省庁で設けて情報の周知に努めているようですが、この度、内閣府がマイナンバーに関するリーフレットを作成しました。「概要」と「事業所向け」の構成にわかれており、社内対応や社内研修を行ううえでも参考となる資料となっています。
内閣官房「社会保障・税番号制度ホームページ」をご覧いただくと随時新しい情報や資料がアップされていますので、自社の対応を検討するうえでも参考になることでしょう、
◆自社の対策はどうする?
マイナンバー対応を行ううえでは、制度の概要や実務への影響などを整理して理解するのはなかなか難しい面もあります。
各種セミナーや書籍等から情報を入手し、自社の現状に合わせて社内スケジュールを組みながら対策を講じていく必要があるでしょう。
厚生労働省は、企業内でパワーハラスメント対策に取り組む際の参考となる「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を初めて作成しました。
マニュアルは同省のホームページでダウンロードできるほか、都道府県労働局や労働基準監督署、労使団体など、全国で5万部が配布されるとのことです。
また、同省では7月からこのマニュアルを活用した「パワーハラスメント対策支援セミナー」を全国約70カ所で無料開催します。
◆規模の小さい会社ほど対策が進んでいない
2012年度に実施された「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、80%以上の企業が「職場のパワハラ対策は経営上の重要な課題である」と考えているにもかかわらず、「予防・解決のための取組み」を行っている企業は全体の45.4%となっており、特に従業員数100人未満の企業では18.2%に留まっていることから、従業員規模が小さい企業ほど、対策が進んでいないことが明らかになっています。
◆マニュアルの内容は?
マニュアルは、職場のパワーハラスメントを予防・解決するために、(1)トップのメッセージ、(2)ルールを決める、(3)実態を把握する、(4)教育する、(5)周知する、(6)相談や解決の場を提供する、(7)再発を防止する、の7つの項目が掲げられています。
これら(1)~(7)の実施を20社の企業が行い、そのフィードバックを参考にポイントや規定例等を盛り込みつつ解説しています。なお、マニュアルには、従業員アンケートのひな形や社内研修用のレジュメ、ハラスメント相談対応者が使う相談記録票などの資料も豊富に収録されています。
◆放置せず予防・解決に向けての取組みを!
職場のパワーハラスメントは、近年、都道府県労働局や労働基準監督署等への相談が増え続けています。また、ひどい嫌がらせ等を理由とする精神障害等での労災保険の支給決定件数が増加しているなど、社会的な問題として表面化しています。
これらの問題を放置した場合には貴重人材を失うばかりでなく、企業側が裁判で責任を問われることもあります。こうした悪い影響や損失を回避するためにも、本マニュアルを活用してパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組みを行うべきでしょう。