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人事労務管理最新情報

変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。

職場での旧姓使用 ~東京地裁判決から考える                             H28年11月

◆女性教諭の訴えを棄却

私立中学・高校の30代の女性教諭が、結婚後に職場で旧姓使用が認められず人格権を侵害されたとして、学校側に旧姓の使用と約120万円の損害賠償を求めた裁判の判決が1011日に東京地裁であり、「職場で戸籍上の氏名の使用を求めることには合理性、必要性がある」として、教諭の請求を棄却しました。

 ◆生徒からは旧姓で呼ばれていたが…

女性教諭は2003年から同校に勤務し、20137月に結婚、改姓。学校側には旧姓の使用を認めるよう申し出ましたが、学校側は旧姓の使用を認めませんでした。

この女性教諭は、現在はやむなく時間割表や保護者への通知などには戸籍名を使用しているそうですが、教室内では旧姓を名乗り、生徒の多くからも旧姓で呼ばれているとのことです。

 ◆判決は「戸籍名の使用に合理性」

判決では、旧姓について「結婚前に築いた信用や評価の基礎となる」と述べ、その使用は法律上保護されると位置付けています。

一方で戸籍名については、「戸籍制度に支えられたもので、個人を識別するうえでは旧姓よりも高い機能がある」とし、今回のように、職場の中で職員を特定するために戸籍名の使用を求めることには合理性があると結論付けました。

 ◆旧姓使用は社会に根付いていない?

原告側弁護士は「現代の社会の実情が見えていない判決だ」と批判し、控訴する意向です。

今回の判決は、男性裁判官3人が判断したもので、旧姓を使える範囲が社会で広がる傾向にあることは認めつつも、「既婚女性の7割以上が戸籍名を使っている」とする新聞社のアンケート結果や、旧姓使用が認められていない国家資格が「相当数」あることを理由として、「旧姓を戸籍名と同様に使うことが社会で根付いているとは認められない」と結論付けました。

 ◆国会での議論は進まないまま

旧姓使用をめぐっては、昨年12月の最高裁大法廷判決が夫婦同姓を「合憲」と判断しています。

一方、結婚後の姓の問題については「国会で論じ、判断するものだ」ともしましたが、国会での議論はその後進んでいません。

個人を識別するうえで、旧姓より戸籍上の姓のほうが、本当に合理性があるのか、行政では住民票の写しやマイナンバーカードへの旧姓併記も検討され、「女性活躍」が唱えられる中で時代に逆行するのではないか、判決を受けて再び議論が高まりそうです。

平成27年度における民間企業の給与の実態は?                                           H28年11月

◆調査の概要

「民間給与実態統計調査」は、国税庁により昭和24年分から調査が始まり、以後毎年実施されており今回が第67回目に当たります。

この調査は、統計法に基づく基幹統計「民間給与実態統計」の作成を目的とする調査であり、民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討および税務行政運営等の基本資料とすることを目的としています。

 ◆調査結果のポイント

(1)給与所得者数

給与所得者数は4,794万人で、前年に比べ0.8%増加しています。男女別にみると、男性2,831万人、女性1,963万人で、前年比で男性は0.9%の増加、女性は0.6%の増加となっています。

正規・非正規についてみると、正規3,142万人、非正規1,123万人で、前年に比べ、正規は1.2%の増加、非正規は3.0%の増加となりました。

(2)給与総額

給与総額は2015,347億円で、前年に比べ2.1%増加しています。男女別では、男性1473,750億円、女性541,597億円で、前年比で男性は2.1%の増加、女性は2.0%の増加となっています。

正規・非正規についてみると、正規1523,442億円、非正規191,462億円で、前年に比べ、正規は2.7%の増加、非正規は3.5%の増加となっています。

(3)平均給与

年間の平均給与は420万円で、前年に比べて1.3%増加しています。男女別にみると、男性521万円、女性276万円で、前年比で男性は1.2%増加、女性は1.4%増加しています。

正規・非正規別では、正規485万円、非正規171万円で、前年に比べ、正規は1.5%の増加、非正規は0.5%の増加となっています。

(4)業種別の平均給与

平均給与を業種別にみると、最も高いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の715万円、次いで「金融業,保険業」の639万円となっており、最も低いのは「宿泊業,飲食サービス業」の236万円でした。

(5)納税者数および税額

給与所得者4,794万人のうち、源泉徴収により所得税を納税している者(納税者)は4,051万人で、その割合は84.5%でした。

また、税額は88,407億円で、納税者の給与総額に占める税額の割合は4.70%という結果となっています。

運送事業者における法違反等の状況     H28年11月

◆約85%の事業場で法令違反!

厚生労働省から、トラック、バス、タクシーなどの自動車運転者(ドライバー)を使用する事業場に対して行われた監督指導や送検の状況(平成27年)が公表されました。

監督指導が行われた事業場は3,836事業場あり、このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは3,258事業場(84.9%)、改善基準告示違反が認められたのは2,429事業場(63.3%)となっています。

 ◆監督指導等の状況

監督が実施された事業場数の内訳は、トラック:2,783、ハイヤー・タクシー:486、バス:226、その他:341で、どの業種でも80%以上の違反率となっており、主な違反事項としてはどの業種においても「労働時間」「割増賃金」「休日」の順で多く指摘されています。

また、改善基準告示違反では、「最大拘束時間」「総拘束時間」「休息時間」「連続運転時間」「最大運転時間」の順で多く指摘されています。

重大または悪質な労働基準関係法令違反による送検件数は60件となっており、特にトラックは送検件数が上昇傾向にあり、他の業種が減少傾向にあるのとは対照的です。

 ◆省庁間の連携による監督指導

以前から、労働基準監督機関と地方運輸機関が、その臨検監督等の結果(改善基準告示違反等)を相互に通報する取組みが行われていますが、労働基準監督機関が通報を受けた件数は年々増加しています(平成25年:256件→平成27年:376件)。

反対に、労働基準監督機関から通報した件数は減少しているようですが、通報件数自体が821件(平成27年)と多く、「労基署の監督だから大丈夫」といった考えは通用しないでしょう。

 ◆経営の改善には労務面の取組みも重要

ドライバーについては長時間労働の実態が常態化しており、脳・心臓疾患の労災請求件数および認定件数が最も多い職種です。

運送業では「人手不足」に悩む会社が特に多くなっていますが、福利厚生やコンプライアンス面を整備していかないと満足な採用につなげられない時代となりました。

仕事内容や運賃の見直しなどの財務面と併せて、労務面の課題にも積極的に取り組む必要があると言えるでしょう。

労働時間管理をめぐる役員の責任と求められる対応                                       H28年11月

◆過労死の責任を問う全国初の「株主代表訴訟」が提起

銀行の行員だった男性が過労からうつ病を発症し、投身自殺をした事件で、男性の妻が銀行を訴え、熊本地裁は、銀行が注意義務を怠り、行き過ぎた長時間労働をさせたと認定し、慰謝料など12,886万円の支払いを命じました(201410月)。同事件では、労働基準監督署が発症直前の時間外労働時間が207時間に及んでいたと認定していました。

そして今年9月、この妻が、銀行の株主としての立場で、当時の役員ら11人に対し、過労死を防ぐ体制づくりを怠り銀行に損害を与えたとして、約26,400万円の損害金の支払いを求める株主代表訴訟を提起しました。

 ◆株主代表訴訟で追及される役員の責任とは?

役員は、会社に対し忠実義務を負っており(会社法355条等)、違反すると任務懈怠責任(会社法4231項)を負います。

株主代表訴訟では、役員の任務懈怠により会社が損害を被ったとして責任追及がなされますが、過労死や過労自殺について任務懈怠責任を問う株主代表訴訟は初めてとのことです。

 ◆過労死・過労自殺で役員個人の責任を認めるケースが相次ぐ

従業員の過労自殺について役員個人の責任を認めた事件として有名なのが、20115月の大庄(日本海庄や)事件における大阪高裁判決です。同事件は、役員の第三者に対する損害賠償責任を定める会社法4291項の規定が、過労死・過労自殺の事案でも適用されることを明らかにしました。

201512月に和解が成立したワタミ過労自殺訴訟でも、原告側によれば、和解条項で、創業者について「最も重大な損害賠償責任を負う」ことを確認しています。

経営者による長時間労働の放置は、厳しい責任追及の対象となり得ると言えるでしょう。

従業員の「若年性認知症」と企業の対応 H28年11月

◆「若年性認知症」への対応は今後の大きな課題

判断力が鈍くなった、何度も同じことを繰り返し聞くようになった――「もしかしたら『認知症』かもしれない」、そんな社員はいませんか?

65歳以上の発症を「認知症」、65歳未満の発症を「若年性認知症」と言います。特に若年性認知症は、職場や家庭で様々な役割を担う働き盛りの年代で発症することが多い(2009年の厚生労働省推計では、平均発症年齢は51.3歳)一方で、就労経験のある若年性認知症患者の約8割が離職(厚生労働省「患者生活実態調査」2014年)を余儀なくされ収入源を絶たれるなど、影響は深刻です。

65歳までの雇用義務化で働くシニア層が急増する中、「社員が認知症になったらどう対処するか」は、今後、企業にとっての大きな課題となると言えます。

 ◆大切なのは「早期発見」と「適切な対処」

若年性認知症の場合、認知症への知識不足(「この年で認知症になんてなるはずがないし、物忘れは加齢のせい」)や、認知症と診断されるリスクへのおそれ(「認知症だと診断されたら、働き続けることができない」)などから、医療機関の受診が遅くなりがちです。

しかし、認知症は、早期に適切な治療を受けることによって症状の進行を抑えられることもあります。特に職場では、普段と違う行動や言動の変化にも気がつきやすいと考えられますので、「あれっ?」と思った時に医療機関につなげてあげることが肝要です。

また、認知症との診断を受けたとしても、疲労に配慮して就労時間を短くしたり、業務内容を変えたりする(正確性が強く求められる業務は難しいが、比較的単純な労務作業であれば継続が可能)など、職場の対応いかんにより長く働き続けることができる可能性も高まります。

このような適切な対処によりコミュニティに参加し続けることは、進行を遅らせることにもつながります。

 ◆活用したい「若年性認知症支援コーディネーター」

厚生労働省は今年度から、都道府県に「若年性認知症支援コーディネーター」を配置しています。職場に対しては、勤務調整や就労継続のためのアドバイスをするほか、職場復帰のための支援もしてくれますので、ぜひ活用したい存在です。

現在、高年齢者の労働災害防止は重要な課題となっています。

厚生労働省の「第12次労働災害防止計画」によると、60歳以上の労働者の死亡災害発生率(危険度)は若者の3.6倍、また、50歳以上の労働者が全死亡災害の56%を占めています。

労働者の定年延長や退職者の再雇用が進み、企業の人手不足感から高齢者の積極的な活用というニーズが生じている中で、高年齢の就業者は今後さらに増えることが見込まれますので、対策は急務です。