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人事労務管理最新情報

変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。

「定年後再雇用者の賃金減額」をめぐる裁判で会社側が逆転勝訴                        H28年12月

◆東京地裁から東京高裁へ

今年5月、東京地裁において、定年後に1年ごとの契約で嘱託社員として再雇用された複数の労働者(トラックドライバー)の職務内容が定年前と変わらないにもかかわらず、会社(長澤運輸)が賃金を約3割引き下げたこと(正社員との賃金格差)は労働契約法第20条の趣旨に反しており違法との判決がありました。

賃金格差について同条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)の違反を認めた判決は過去に例がなく、「通常の労働者と定年後再雇用された労働者との不合理な格差是正に大きな影響を与える画期的な判決である」との評価もあり、人事労務担当者にとっては大きなインパクトのある判決として受け止められました。

その後、会社側が控訴していましたが、112日にその判決が東京高裁でありました。

 ◆控訴審における判断は?

控訴審判決において、裁判長は「定年後再雇用での賃金減額は一般的であり、社会的にも容認されている」とし、賃金の引下げは違法だとして差額の支払い等を命じた東京地裁判決を取り消し、労働者側の訴えを棄却しました。

労働者側の弁護士は、「減額が一般的であるとしても通常は職務内容や責任が変わっており、社会的に容認とする根拠は何もない」として、上告する方針を示しています。

 ◆賃金の設定には慎重な判断が必要

最高裁まで進む可能性があるため、司法における最終的な判断がどのように確定するのかは不明ですが、「控訴審の判断が妥当」と見る向きが多いようです。

しかし、この事件が定年後再雇用者の処遇についてのこれまでの常識(当然のように賃金の引下げを行うこと)について一石を投じたことには間違いはなく、最終的な結論がどちらに転んだとしても、今後、会社としては「定年後再雇用者の処遇」については慎重な判断が求められると言えるでしょう。

マタハラ防止策を講じない企業の求人はハローワークで不受理に                                     H28年12月

◆来年1月施行

厚生労働省は、昨年10月から順次施行されている若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)に基づき、マタニティー・ハラスメント(マタハラ)に対して、男女雇用機会均等法で義務付けた防止措置を講じない企業の求人をハローワークで受理しないように制度を改めます。

◆求人不受理の対象に「マタハラ」を追加

ハローワークでは今年3月から、一定の労働関係法令の違反があった事業所を新卒者などに紹介することのないよう、こうした事業所の新卒求人を一定期間受け付けない仕組みを創設しています。

具体的には、労働基準法・最低賃金法については、(1)1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けている場合、(2)違法な長時間労働を繰り返している企業として公表された場合、(3)対象条項違反により送検され公表された場合、また男女雇用機会均等法と育児・介護休業法については、法違反の是正を求める勧告に従わず公表された場合等に、当該企業の新卒求人を受理しない取り組みを始めています。

今回は、その不受理の対象に、「マタハラ」に関する規定を加えるというものです。

 ◆両立支援で女性の社会進出を後押し

男女雇用機会均等法は、女性従業員の妊娠や出産を理由に職場で不利益な扱いをされることがないように、相談窓口を設置するなど防止体制を整備するように求めています。

厚生労働省の調査で法違反が見つかれば、是正を求める勧告を行いますが、それにも従わずに企業名が公表された場合には求人を受理しないこととします。不受理となる期間は、違反が是正されてから6カ月が経過するまでの期間となります。

育児と仕事を両立させる環境整備を企業に促し、女性の社会進出を後押しする狙いです。

 ◆就労実態等の職場環境に関するデータベースも整備

また、厚生労働省では、残業時間や育休の取得率など企業の職場環境に関する様々な情報を集めたデータベースを整備する計画です。

若者がいわゆる「ブラック企業」へ就職してしまうことを防ぐために、労働条件などの的確な情報に加えて、平均勤続年数や研修の有無・内容といった就労実態等の職場情報も併せて提供し、職場情報についての開示を強化するように企業側に働きかけ、学生や転職を考えている人がそうした企業に就職することを未然に防ごうというものです。

内閣府の調査結果にみる「働く女性」の実態                          H28年12月

◆平成28年度の結果が発表

内閣府が実施した平成28年度の「男女共同参画社会に関する世論調査」の結果が発表されました。

この調査では、男女共同参画社会に関する意識、家庭生活等に関する意識、女性に対する暴力に関する意識、旧姓使用についての意識、男女共同参画社会に関する行政への要望等について調査が行われましたが、今回は「働く女性」に関係する部分の調査結果を取り上げます。

 ◆職場における男女の地位の平等感

職場において男女の地位が平等かどうかについての調査では、「男性のほうが優遇されている」との回答割合が56.6%(「男性のほうが非常に優遇されている」15.1%、「どちらかといえば男性のほうが優遇されている」41.5%)、「平等」との回答割合が29.7%、「女性のほうが優遇されている」との回答割合が4.7%(「どちらかといえば女性のほうが優遇されている」4.1%、「女性のほうが非常に優遇されている」0.6%)となっています。

性別で見ると男性のほうが「平等」と答えた割合が高くなっており、年齢別では、「男性のほうが優遇されている」と回答した割合は40歳代が一番高い結果となっています。

 ◆女性が増えるほうがよいと思う職業や役職について

職業や役職において今後女性がもっと増えるほうがよいと思うものに関する調査では、「国会議員、地方議会議員」を挙げた人の割合が58.3%と最も高く、以下、「企業の管理職」(47.0%)、「閣僚(国務大臣)、都道府県・市(区)町村の首長」(46.1%)、「小中学校・高校の教頭・副校長・校長」(42.0%)、「国家公務員・地方公務員の管理職」(41.0%)、「裁判官、検察官、弁護士」(38.7%)となっています。

 ◆女性が職業を持つことに対する意識

一般的に女性が職業を持つことについてどう考えるかについては、「女性は職業を持たないほうがよい」との回答割合が3.3%、「結婚するまでは職業を持つほうがよい」が4.7%、「子供ができるまでは職業を持つほうがよい」が8.4%、「子供ができても、ずっと職業を続けるほうがよい」が54.2%、「子供ができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業を持つほうがよい」が26.3%となっています。

性別に見ると、「子供ができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業を持つほうがよい」との回答割合は女性のほうが高いことがわかりました。

年齢別に見ると、「子供ができても、ずっと職業を続けるほうがよい」と回答した人は4050歳代で多く、「子供ができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業を持つほうがよい」と答えた人は1829歳で多くなっています。

「定年廃止・年齢引上げ」実施する中小企業の割合は?                                    H28年12月

◆定年廃止・年齢引上げを行う中小企業は増加

厚生労働省から、平成28年「高年齢者の雇用状況」(61日現在)が公表されました。

これは、企業に求められている高年齢者の雇用状況の報告を基に「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などを集計したもので、今回の集計では、従業員31人以上の企業153,023社の状況がまとめられています。

この結果から中小企業(従業員31人~300人規模。集計対象は137,213社)の状況を見てみましょう。

 ◆「定年制の廃止」「65歳以上定年」について

定年制を廃止している企業は全体で4,064社(前年比154社増)、割合は2.7%(同0.1ポイント増)となり、定年を65歳以上としている企業は全体で24,477社(同1,318社増)、割合は16.0%(同0.5ポイント増)となりました。

このうち、定年制を廃止した中小企業は3,982社(同137社増)、割合は2.9%(同変動なし)でした。また、65歳以上定年としている中小企業は23,187社(同1,192社増)、割合は16.9%(同0.4ポイント増)でした。

 ◆「希望者全員66歳以上の継続雇用制度」の導入状況

希望者全員が66歳以上まで働ける継続雇用制度を導入している企業は、全体で7,444社(同685社増)、割合は4.9%(同0.4ポイント増)となり、このうち中小企業は7,147社(同633社増)、割合は5.2%(同0.3ポイント増)という状況です。

 ◆「70歳以上まで働ける企業」について

70歳以上まで働ける企業は、全体で32,478社(同2,527社増)、割合は21.2%(同1.1ポイント増)となり、このうち中小企業は3275社(同2,281社増)、割合は22.1%(同1.1ポイント増)という状況です。

 ◆制度見直しの必要性

以上のように、人手の確保が大変な時代になり、定年制の廃止や年齢引上げを実施する企業は増加していますが、こうした状況は今後も続きそうです。

また、最近の裁判例では、「長澤運輸事件(地裁判決)」や「トヨタ自動車事件(高裁判決)」などのように、定年後の再雇用に伴う賃金や職種変更に関して、企業にとって厳しい判決が出るケースがあるようです。

定年後の再雇用制度を設けている企業では、制度の内容や実施方法について見直しが必要かもしれません。

「賃上げ実施の中小企業」の法人税減税を拡大へ                    H28年12月

2017年度税制改正で中小企業の法人税減税額引上げの方針

政府・与党は、資本金1億円以下の中小企業における賃上げの機運を高めるため、「所得拡大促進税制」を拡充して賃上げを実施した中小企業の法人税の減税額の引き上げることを、12月にまとめる与党税制改正大綱に盛り込む方針を固めました。

 ◆「所得拡大促進税制」って何?

本制度は2013年度に導入され、中小企業だけでなく大企業も活用することができます。

具体的には、2012年度の給与支給総額に比べて3%以上、また、支給総額と従業員の平均給与が前年度以上の場合に、増加分の10%が法人税額から減額されるという制度で、2014年度には約74,000社の中小企業が本制度を利用していますが、中小企業全体から見ればごく一部にとどまっています。

最低賃金の引上げ等も行われていますが、今年の中小企業の賃上げ幅は、厚生労働省の調査によれば1.1%です。

そこで、この減額幅を20%に引き上げることにより中小企業の賃上げを促す、というのが改正方針の趣旨です。

 ◆対象となる「賃上げ」とは?

本制度の対象となる賃上げには、正社員の基本給引上げ(ベースアップ)だけでなく、賞与支給額やパート・アルバイトの賃金の引上げも含まれます。

賞与支給額は業績に左右されるものですが、本制度は事前申請なしに利用できるので、「思わぬ好景気に見舞われた」という企業にとってはチャンスです。

また、人材確保のためパートの正社員化を進めたり、時給引上げ等を行ったりしている企業でも要件を満たす可能性があります。

一度、自社の給与支給総額の変化を確認してみてはいかがでしょうか?

「働き方改革」実現のためのテレワークの普及・促進                   平成28年12月

◆テレワークの大幅な見直しを検討

政府の「働き方改革実現会議」で安倍首相は、テレワークに関する指針を年度内に見直し、導入の拡大を図ることを指示しました。

テレワークは、厚生労働省が2004年に策定した指針では在宅勤務のみを前提としていましたが、通信端末機器の発達などにより、複数の企業が共同で利用できる「施設利用型」や、ノートパソコンなどを使って喫茶店などで働く「モバイルワーク」といった、時代に合った仕事の仕方の選択ができるよう大幅な見直しを検討するとしています。

 ◆テレワークの普及状況

総務省等の調査によると、企業のテレワーク制度の導入は、昨年末時点で16.2%(対前年比4.7ポイント増)で、週8時間以上を社外で働く「テレワーカー」は約790万人でした。

当初は、自宅で集中して業務できることから生産性が向上することや、育児や介護、病気の治療と仕事を両立させるものとして期待されましたが、利用者の勤務時間の管理や評価の難しさにより、あまり普及していないのが実態です。

また、22府省で実施した公務員のテレワーク推進の実態調査によると、実施割合は職員全体の3%強でした。総務省や厚生労働省、経済産業省などの13府省は、システムの整備、実施ルールや勤務形態が確立され、すでにテレワークが本格導入されていますが、警察省や財務省、防衛省などの9府省では、「セキュリティ確保対策が必要で、テレワークに対する職場理解の向上も必要」など、試行段階にとどまり対応にばらつきがあります。

 2020年までに全労働者の10%以上が目標!

政府は、2020年までに週1回以上在宅で勤務するテレワーカーを全労働者の10%以上に、導入企業数を2012年度比の3倍にすることを目標に掲げています。

また、テレワーク推進関係4省(総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)では11月を「テレワーク月間」として、認知向上やテレワークに関する活動への参加を広く呼びかけ、イベントやセミナーを開催します。

時代に合った働き方のメリットが十分に活かされ、普及拡大に向け、環境が整備されることが期待されます。

最低賃金改定(大幅アップ)と給与体系の見直し                     平成28年12月

 ◆最低賃金改定、今年は過去最高額の引き上げ

今年も101日から20日にかけて最低賃金が改定され、2016年度の最低賃金額(全国加重平均額)は時給823円となりました。

最低賃金は2007年以降、右肩上がりで増額し続けています。特に今年は、政府による「ニッポン一億総活躍プラン」「経済財政運営と改革の基本方針2016」「日本再興戦略2016」などもあり、過去最高額の引き上げ(プラス25円)となりました。

 ◆懸念される人件費上昇

政府は「2020年に最低賃金を全国平均で1,000円」という目標を掲げています。この目標の実現性は不明ですが、少なくとも来年以降も引き続き最低賃金は増額されるものと見てよいでしょう。

最低賃金の引上げは、収入増による消費活性化を期待しての政策ですが、言うまでもなく企業にとっては人的コスト増による収益悪化というマイナス面もあります。

 ◆最低賃金引上げで企業の35%が給与体系見直し

10月中旬に帝国データバンクが発表した「最低賃金改定に関する企業の意識調査」によると、有効回答企業1292社のうち、35.0%の企業が「給与体系を見直した」または「見直しを検討している」と回答しています。実に3社に1社が、「給与体系見直し」すなわち増額しているという結果です。

業種別に見ると、「小売」が48.9%と最も多く、「運輸・倉庫」43.4%、「製造」41.0%と続きます。パート・アルバイトを雇用割合が高い業種ほど給与体系が見直されているようです。

また、給与体系見直しの理由として、複数の企業が「人材確保」を挙げています。慢性的な人手不足のなか、同業他社に人材が流れないよう賃金を増額する企業が増えているのです。

 ◆給与体系見直しにベストなタイミングとは?

最低賃金を下回ると、最低賃金法により使用者は罰金刑に課せられますが、最低賃金の金額さえ支払えばよいかというと、そうでもありません。

すでに多くの企業が最低賃金に合わせて賃金を増額しており、賃金の相場は年々上昇しています。従来のままの給与体系では相対的に低賃金の企業となり、人材確保が難しくなるかもしれません。

給与体系見直しは、人件費増加につながるほか、従業員の合意形成も必要なことですから、資金的・時間的に余裕がある時機に行うことが肝心です。