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変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。
H28年8月 「解雇」をめぐる訴訟・労働審判の特徴と解決金決定の判断要素
H28年8月 経団連が「同一労働同一賃金」で提言 その影響は?
H28年8月 「求人が充足されやすい企業」の特徴とは?
H28年8月 調査結果にみる 中小企業の「人手不足」への対応と課題
H28年8月 「介護休業」取得の判断基準を緩和へ
H28年8月 企業に求められる「マタハラ」防止対策
従業員を解雇した場合、最終的には「労働審判」や「訴訟」に持ち込まれるケースがありますが、裁判官は解雇事案をどのように見ているのでしょうか?
今年4月に開催された厚生労働省の会合(透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会)において、裁判官として36年の経験を持つ難波孝一氏(現在は弁護士)が解雇事案の傾向等について語った内容が同省のホームページで公開されていますので、その内容を一部抜粋してご紹介いたします。
◆訴訟における解雇事案の特徴
まず、訴訟の解雇事案では、労働者は会社で働くことを求めている事案が多く、「地位確認」を求めてくる事案が多いそうです。
中には、地位確認と言いながらも、すでに別な会社で働いており「果たしてこの労働者は本当に現職復帰を考えているのか?」と思う事案もあったそうですが、大多数のケースでは労働者は会社で働くことを求めている事案が多いようです。
◆労働審判における解雇事案の特徴
一方、労働審判の解雇事案では、労働者は会社を辞めることを念頭に置きながら、金銭解決を求めてくる事件が大多数だそうです。
そのため、会社で働くことを希望する労働者は、労働審判ではなくて仮処分で地位確認を求めることが多いようです。
◆解雇における解決金の判断要素
解雇事案では、最終的に解決金の支払いにより和解となるケースが多いですが、解決金額の判断要素にはどのようなものがあるでしょうか?
この点、難波氏によると、「解雇が有効か無効かの確度」、つまり訴訟であれば裁判官の心証、労働審判であれば委員会における心証が最大の判断要素になるとのことです。
また、「会社や労働者の経済状況」や、「会社がその労働者に辞めてもらいたい気持ちの強さ」、「労働者がその会社にずっと勤務して頑張りたいと思っている気持ちの強さ」といった点も影響し、さらには「解決に要する期間が今後どのぐらいかかるか」、「労働者の在職期間がどのくらいか」といったこと等も含め、総合的に判断されるようです。
経団連は、政府が検討を進めている「同一労働同一賃金」についての提言をまとめたそうです。これによると、法改正にあたっては、日本の雇用慣行や賃金体系に留意した制度の構築が望ましいとし、国内経済の好循環を実現するため、正社員化の一層の推進など、非正規労働者に対する幅広い処遇改善を進める必要性を指摘しているとのことです。
◆提言の骨子
上記提言のポイントは以下の通りです。
○職務給を前提とした欧州型の導入は困難で、日本の雇用慣行に合わせた仕組みづくりが必要。
○職務内容だけでなく、勤務地や職種の変更といった様々な要素を総合的に考えて同一労働かどうか評価すべき。
○非正規労働者への賃金制度の説明の充実が必要。
○正社員化や教育訓練の充実など、総合的な処遇改善を進めるべき。
◆日本の実態に即した制度を
同一労働同一賃金に関しては、欧州各国ではすでに、仕事の内容に応じて賃金が決まる「職務給」が設定され、広く定着しています。
しかし日本では、経験や能力に応じた「職能給」や、勤続年数や年齢に応じた「年齢・勤続給」などで基本給を決めている企業が多数です。
そこで経団連は、「職務内容だけでなく、勤務地や職種の変更の可能性などを含めた人材活用の仕方など、様々な要素を総合的に勘案して同一の労働に当たるかどうか評価することを基本とすべき」と主張し、日本の実態に即した制度の実現を求めています。
◆政府のガイドラインや法改正への反映も
同一労働同一賃金は、安倍首相が今年1月に「1億総活躍社会」の柱として打ち出したもので、労働者の約4割を占める非正規労働者の処遇を改善し、格差是正や消費拡大につなげる狙いがあります。
一方で経済界には、人件費の増加につながるとの警戒感も出ています。提言では、政府が年内をめどに策定するガイドラインについても言及し、「明確に不合理と(各企業の労使が)認識できる事例を例示すべきだ」として、点検や改善に役立つ指針の策定を求めています。
政府は、早ければ来年にも労働者派遣法など関連法の改正案を国会に提出する方針で、今後、厚生労働省の審議会で法制化に向けた議論に入る予定ですが、経団連は今回の提言を制度設計に反映するよう求めています。
厚生労働省の「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」(実施は三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の調査結果が公表されました。
この調査は、「近年、景気の緩やかな回復基調に伴い、有効求人倍率が上昇傾向にある中において、特に中小企業の多くで人手不足が常態化することが予想される。では、今後どういった企業の求人が充足されやすいのか」という視点から、企業が労働条件や職場環境等の改善に取り組むことと、労働生産性や業績の向上との関連性を調べたものです。
◆重要なポイントは?
雇用管理改善の取組み(評価・キャリア支援、ワーク・ライフ・バランス、女性活用、ビジョン共有・トラブル解決の仕組み等の人材マネジメントなど)は、従業員の意欲・生産性向上や、業績向上・人材確保につながるとの結果が出ていますが、調査結果からは以下の点が重要だということが明らかになりました。
(1)「従業員満足度」と「顧客満足度」の両方を重視する
経営方針として、これらの両方を追求するほうが、効果が高いとのことです。また、「顧客満足度」を重視する企業は多いですが、「従業員満足度」を上位に挙げる企業は必ずしも多くなく、経営者はこれら両方を経営方針に据え、従業員に浸透させることが望ましいとされています。
(2)雇用管理改善に継続的に取り組む
「10年以上前から行っている」など早期に取り組んできた企業で人事目標の達成度合いが高いことから、雇用管理改善が効果を現すにはある程度の時間が必要なことがうかがえます。 また、こうした早期から取り組む企業では正社員が「量・質ともに確保できている」とする割合が高く、人材が確保にも好影響を与えているようです。
(3)表彰・認定には取組みを推進する効果
行政による様々な企業の表彰・認定制度があり、これらの利用が効果的とのことです。
◆若者の定着にも効果あり
改善の取組みの中でも、労働時間の短縮や有給休暇取得促進、働きやすい職場づくりなどは、特に若者の定着に効果があるとの回答が多かったそうです。
また、若手が相談しやすい・意見を言えるような仕組みや、賃金・評価制度の見直しも効果があったとの回答も複数あったそうです。
しかし、こうした改善はやみくもに取り組めばよいものではなく、目標を設定し計画的に取り組み、それを社外に積極的に情報発信することの必要性も指摘されています。5年後、10年後の自社の在りたい姿を描きながら一歩ずつ進めていく必要があります。
日本商工会議所から6月下旬に「人手不足等への対応に関する調査」の集計結果が公表されました(調査対象:中小企業4,072社、回答企業:2,405社)。企業における人員の過不足状況や求める人材、女性の活躍推進をはじめとする人手不足対応への取組み状況等について知ることができます。
◆半数以上の企業が人手不足に!
まず、「人員が不足している」と回答した企業は55.6%(平成27年調査50.3%)、「過不足はない」と回答した企業は39.7%(同45.5%)となっています。全体の半数以上の企業で人手不足が生じており、昨年調査よりもその割合が約5%上昇していることから、その傾向が強まっている状況です。
業種別にみると、「宿泊・飲食業」(79.8%)で不足感が最も高く、「介護・看護」(77.5%)、「運輸業」(72.3%)、「建設業」(63.3%)と続いています。
◆企業が求める人材とは?
また、「人員が不足している」と回答した企業の69%が、求める人材として「一定のキャリアを積んだミドル人材」と回答しています。
ただ、その他の項目(「高卒社員」「大卒社員」「管理職経験者等シニア人材」)においても、前年調査と比較して高い数値となっており、幅広い層で人手不足が広がっている状況です。
◆人手不足への対応と課題
人手不足への対応として、女性や高齢者など幅広い人材の活用等が求められていますが、本調査では実際の企業の取組状況を知ることができます。
女性の活躍推進については、「実施している」が40.0%、「実施を検討している」が21.5%となり、6割を超える企業で何らかのアクションを起こしています。
女性の活躍を推進するうえでの課題としては、「女性の職域が限定されている」(38.6%)が最も高く、「女性の応募が少ない(女性社員が少ない)」(31.7%)、「女性が管理職登用を望んでいない」(23.0%)が続いています。
65歳以降の雇用延長については、すでに65歳超の者を雇用している企業は回答企業の約7割となっているものの、65歳以降の雇用延長について「義務化は反対」(30.1%)、「65歳までは雇用できるがそれ以上の対応は難しい」(27.1%)といった意見も出ています。
65歳超まで雇用できない理由として、「本人の体力的な面で難しい」(66.5%)、「若い年齢層の採用の阻害になる」(47.6%)、「生産性が低下する」(37.3%)、「雇用し続ける余裕(人件費等)がない」(22.7%)といった回答がありました。
介護休業制度は、家族を介護している労働者が最長93日間取得することができ、その間、介護休業給付として休業前賃金の40%相当額を受け取ることができます。要件を満たす非正規労働者も取得できますが、取得割合は約16%にとどまり、年間約10万人が「介護離職」をしていると言われ、制度が十分に機能していないという問題があります。
◆介護休業制度をめぐる法改正
介護離職者には企業の中核を担う40~50歳代の人も多いことから、制度を活用しやすくするための改正案が今年の通常国会で成立し、来年1月1日から施行されることとなりました。
主な改正点は、(1)最大3分割で取得可能(上限93日間)、(2)祖父母や兄弟姉妹のための介護休業の同居要件廃止、(3)介護休業給付金の支給率を67%にアップです。
◆取得できる基準の緩和でより取得しやすく
上記改正法の施行に合わせて、厚生労働省は、介護休業の取得基準を緩和する方針を決めました。現行基準は特別養護老人ホームへの入所が必要かどうか(要介護2~3程度)が目安となっていましたが、介護認定と連携していないためわかりにくいという声もあり、介護休業の利用低迷の一因ともなっていました。
新基準では、要介護2以上なら休業を取得できることが明記され、要介護1以下でも、見守りの必要度に応じて休業が取得できるようになります。
◆就業規則、育児・介護休業規程の整備が必要
上記の通り、介護休業制度については来年1月1日から施行される改正法の影響もあり、企業は就業規則や育児・介護休業規程の見直しが必要となります。また、取得基準の緩和により、取得の可否に関する相談や取得希望者が増えることが予想されますので、情報提供や相談対応ができるようにしておく必要があります。
2016年中の対応が求められる事項ですので、漏れのない準備を進めましょう。
厚生労働省は、妊娠や出産を理由とした職場における嫌がらせを意味する「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」の防止対策の1つとして、企業が対処方針を就業規則などに明記し、加害者を懲戒処分とすることなどを求める指針案を示しました。
この指針は今年3月に成立した改正男女雇用機会均等法などに基づくもので、来年1月の施行に合わせて運用が始まる予定です。
◆マタハラ・育休に関する相談が増加
2015年度に全国の労働局の雇用均等室に寄せられたマタハラに関する相談件数が4,762件となり、過去最多を2年連続で更新しました。4,000件を超えたのは初めてのことです。
相談内容で最も多かったのが、「婚姻や妊娠、出産を理由とした不利益取扱い」で2,650件(前年比17.7ポイント増)、次いで「育児休業での不利益取扱い」が1,619件(同20.8ポイント増)となっています。
近年、マタハラが社会問題化しており、認知が広がっていることも影響しているようです。
◆解釈通達も確認を
妊娠を理由とした降格が男女雇用機会均等法に違反するとした2014年10月の最高裁判決を受け、厚生労働省は「妊娠・出産・育児休業等の事由を『契機として』不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産・育休等を『理由として』不利益取扱いがなされたと解され、法違反」とする通知を労働局に出しています。
これに関しては、同省から「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いに係るQ&A」が出ていますので確認しておきましょう。
◆就業規則の確認、防止体制の整備を
冒頭で述べたとおり、厚生労働省の指針案では就業規則等に「懲戒処分」に関する規定を盛り込むことで、加害者に対して厳しく処分することを求めています。
この他にも、マタハラ防止のための周知・啓発や相談体制の整備、再発防止策などを求めていますので、企業としては、今一度しっかりと自社の就業規則、マタハラ防止体制などを確認しておくことが必要です。