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経営の視点で要点解説
高度成長時代、終身雇用をベースとした正社員中心の時代から、バブル崩壊、リーマンショックの荒波を経て、現在ではいわゆる非正規社員の割合が4割近くに達しています。このような環境下、人事に関する問題は、労働契約という法律面の内容がクローズアップされものとなっています。
人事管理に伴う様々な問題の解決には、労働契約に関する法律の知識が不可欠です。ここでは経営者や人事部門の責任者の皆様に、知っておきたい項目を、解説していきます。
また、人事トラブルの防止の為には、労働者側の立場への理解も重要であることを踏まえ、会社側、労働者側双方から見た視点もまとめています。
「人の採用」=「労働契約の締結」です。労働契約は、労働基準法、労働契約法、労働者災害補法保険法、育児介護休業法、男女雇用機会均等法、高年齢者雇用安定法、最低賃金法などさまざまな労働法の適用をうけることになります。ここでは採用する会社側として検討対象となる「試用期間」「雇用期間」の2つのテーマを解説します。
試用期間とは、入社後一定期間を「試用」「見習い」とし、その間の評価によって本採用するかどうかを決定する制度です。一般的には3ヵ月から6ヵ月程度の期間を設定し、就業規則に定めます。
本採用後の解雇が法律上困難なことから、解雇(本採用拒否)のハードルが比較的低い試用期間を利用し、その間に不適切な人を除外できる制度として有効です。ただし、試用期間といっても解雇が自由に認められるわけではなく、本採用後と比較してハードルが低いとは云え、解雇(本採用拒否)には客観的に合理的な理由が必要です。
会社側にとり、本採用までの猶予期間となる試用期間は長くしておきたいという意向が働きます。ただ、試用期間をあまり長くすることは、労働者の地位を不安定にすることにつながり、公序良俗違反として判例(ブラザー工業事件)もあり、一般的には6ヵ月以内とするのが適切と考えられます。また今後労働力人口が減少していく環境下、試用期間を長く取ることによる募集時への影響も考慮しておく必要があります。
試用期間中は、正社員と比較して身分が不安定と云えます。もし本採用されず、試用期間中に解雇となった場合、解雇無効を争うことは可能ですが、本採用後の解雇と比較すれば解雇無効が認められるのは、ハードルが高いと云えます。
試用期間中は、社会保険に加入させず、本採用時点で加入手続を取るケースも見受けられますが、正社員(期間の定めのない)雇用を前提にした試用期間の場合は、試用期間であっても、当初より社会保険加入が義務付けられていますので、注意が必要です。
労働基準法・労働契約法 | 試用期間の規定はなし |
裁判例 | ・ブラザー工業事件 ・三菱樹脂事件 |
採用にあたり、会社が提示できる雇用期間は、「期限の定めのない雇用」「有期雇用(5年以内)」の2種類となります。「期間の定めのない雇用」とは一般的に正社員に適用されおり、採用によりスタートした雇用契約は、会社側からの解雇、本人からの自己都合退職などが無ければ、定年まで続くことになります。一方有期雇用とは、例えば6ヵ月、1年など当初から雇用期間を区切って契約を結ぶ方法です。この有期契約に関しては、労働契約法によって通算5年を超えた場合の「期間の定めのない雇用」への転換ルールや、会社の一方的な雇止めを制限するルールが定められています。
「期間の定めのない雇用」の正社員は、定年までの雇用を約束する義務が発生する一方、職種や配置転換など人事に関する会社の裁量範囲も広いと考えられます。「有期雇用」は人手不足を臨時に解消する場合などでの採用が考えられ、職種や勤務地を限定する場合が多いと云えます。
労働契約法第18条に定められたルールです。平成25年4月1日以後に開始した有期契約が5年を超える場合、労働者が申込みをした時点で、「期間の定めのない雇用」に転換します。労働者の権利(無期転換申込権)であり、この申し込みをするかどうかは労働者の自由ですが、会社側が拒否することは出来ません。
雇用の安定の面からは、「期間の定めのない雇用」が有利となりますが、職種の変更、転勤など会社の人事権が及ぶ範囲も広がります。反対に「有期雇用」では、職種や勤務地を限定した働き方も可能なケースが多いというメリットがあります。
労働契約法第19条に定められたルールにより、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めは無効とされます。上記要件に該当すかどうかは、過去に同種のケースで数多く起こされた裁判例を参考に、判断をしていくことになります。
労働契約法 | 第19条(有期労働契約の更新等) |
裁判例 | ・東芝柳町工場事件 ・日立メディコ事件 |
労働時間は、賃金と並び労働契約の重要な要素であり、その上限について労働基準法の制限があります。また、定められた上限を超えて労働させる(いわゆる残業)場合に必要なルールがあるとともに、業態による繁閑に対応出来るよう、労働時間の上限適用を柔軟に行うことが出来る「変形労働時間制度」も労働基準法には定められています。
労働時間制度の内容は、求職者が重視する項目であり、また残業代との関連で会社財務にも影響が大きい項目ですので、十分な検討が必要です。
1日:8時間、1週:40時間が、労働時間の上限です。
*但し、労働者数10人未満の「商業」「映画・演劇業」「保健衛生業」「接客娯楽業」につ いては、特例として 1日:8時間、1週:44時間となります。
上記上限を超える労働はいわゆる残業となり、残業を行わせるには、就業規則による定めと、「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」を労働基準監督署へ事前に届け出ておくことが必要です。
休憩:1日労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上を休憩として、労働時間の途中に与えることが必要です。休憩は一斉に与えること(一斉付与)が原則ですが、労使協定を締結すれば、一斉付与から適用除外されます。(「運輸交通業」「商業」「金融・広告業」「映画・演劇業」「通信業」「保健衛生業」「接客娯楽業」「官公署」については、労使協定の締結は不要です。)
休日:毎週少なくとも1日、もしくは4週間を通じて4日以上、暦日(午前0時から午後12時までの継続24時間)の休みが必要です。ただし交替制勤務を就業規則で定め、規則的に制度運用される場合は、暦日ではなく継続24時間を休日とすることが認められています。
労働者の過半数で組織される労働組合、労働組合が無い場合は、労働者の過半数を代表する者と、下記の5項目について書面により協定を締結し、労働基準監督署へ届出します。
①時間外・休日労働が必要な具体的理由②対象者の業務、人数 ③1日の延長時間、3ヵ月以内の期間及び1年間についての延長時間 ④休日労働を行う日数、始業・終業時刻⑤協定の有効期間
*但し4については、中小企業については、適用が猶予されています。
4月30日、5月3日・4日の休日分の代わりに4月28日、5月12日・19日の土曜日を 所定の出勤日とすることが可能です。
労働時間の原則は、1日8時間、1週40時間以内となりますが、これを1ヵ月以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間以下であれば、1日及び1週間の法定労働時間を延長することが出来る制度です。
例としてゴールデンウィーク内の週などは、週2日の勤務で残り3日が休日というケースも発生します。この場合、2日の勤務で週16時間となり、40時間の上限までには24時間の差があります。原則の労働時間であれば、週単位で区切りますので、この24時間の差は翌週には持ち越せず、翌週は新たに40時間の上限が設定されます。
1ヵ月単位の変形労働時間制度は、この24時間の差を同一月内であれば他の週に持ち越せる制度です。すなわち24時間(1日8時間×3日)の3日分を他の週に持ち越すことにより、例えば同一月内の他の3週について、土曜日を出勤日とすることも可能になります。
4月30日、5月3日・4日の休日分の代わりに12月1日・8日・15日の土曜日を 所定の出勤日とすることが可能です。
労働時間の原則は、1日8時間、1週40時間以内となりますが、これを1年以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間以下であれば、1日及び1週間の法定労働時間を延長することが出来る制度です。
例としてゴールデンウィーク内の週などは、週2日の勤務で残り3日が休日というケースも発生します。この場合、2日の勤務で週16時間となり、40時間の上限までには24時間の差があります。原則の労働時間であれば、週単位で区切りますので、この24時間の差は翌週には持ち越せず、翌週は新たに40時間の上限が設定されます。
1年単位の変形労働時間制度は、この24時間の差を同一年内であれば他の週、月に持ち越せる制度です。すなわち24時間(1日8時間×3日)の3日分を他の週、月に持ち越すことにより、例えば他の月の3週について、土曜日を出勤日とすることも可能になります。
変形労働時間制度は、1日8時間以内、1週40時間以内という原則で業務運営をすることが困難な企業にとって、検討の対象になる制度です。変形労働時間制度を採用することの具体的な効果例として、以下の項目が考えられます。(採用する変形労働時間制度の種類に応じて、就業規則の制定や労使協定書・カレンダーの労働基準監督署届出など、採用には要件があります)