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変化の激しい時代、人事を取り巻く状況も、常に変わっていきます。労働基準法をはじめとする法令はもちろん、労働市場の動向や各種アンケート調査の結果など、経営の視点で人事に関する最新の情報をピックアップしてお届けします。
R7年6月 令和7年度労働保険の年度更新について
R7年6月 カスハラ被害の体験者+遭遇者は6割近くに
R7年6月 ハローワークにおけるAI活用の取りまとめ
R7年6月 違法の可能性も…自爆営業に要注意!
R7年6月 改正労働安全衛生法が成立しました
R7年6月 オンライン面接・録画面接の注意点は?
R7年6月 学生アルバイトを雇う際に注意すべき労働条件
R7年6月 法務省「ビジネスと人権」意識向上のため取組み事例公表R7年6月 労働基準法「労働者」の判断基準40年ぶりに見直しの議論
◆期 間
令和7年度の期間は6月2日(月)~7月10日(木)です。申告書は5月末頃に送付される予定ですので、そろそろ準備にかかりましょう。既に、厚生労働省ホームページにはパンフレットや解説動画などが掲載されています(確定保険料の算定に使用する計算支援ツールは更新準備中)。
コールセンター(電話番号:0120-256-376)は、5月29日(木)~7月18日(金)で設置され、9時から17時まで土・日・祝日を除き対応してくれます。
◆実務における注意点
パンフレットに掲載されているチェックポイントから、主なものをピックアップします。
・通勤手当等の交通費(非課税分、現物支給の定期代等を含む)の算入漏れはありませんか?
・パート・アルバイトなど短時間労働者の賃金の算入漏れはありませんか?
・事業の代表者や法人の役員への役員報酬を誤算入していませんか?
・賃金総額について、1,000円未満は切り捨てられていますか?
・保険料・一般拠出金額について、1円未満は切り捨てられていますか?
・各労働者について、雇用保険の加入漏れはありませんか?
◆効率的に手続きをしたいなら電子申請
年度更新の書類は項目が多いため記入漏れや記入ミスが心配ですが、電子申請では入力チェック機能や自動計算機能のあるシステムで手続きを行うため、ミスを防げます。
また、前年度の情報を取り込んで書類を作成できるので作成に要する時間も短縮でき、混み合う窓口で長時間待たされることがありません。
【厚生労働省「労働保険年度更新に係るお知らせ」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html
【厚生労働省「労働保険の電子申請に関する特設サイト」】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/denshi-shinsei/tokusetusaito.html
近年、社会的問題となっている「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は、多種多様な仕事とその働き手が集中する東京では特に深刻化しており、今年4月にはカスハラ防止条例が施行されました。
以下の調査は、東京都内在住・勤務の15歳以上の男女に、カスハラについてWeb調査を行った結果を東京都産業労働局がまとめたものです。
◆調査結果のポイント
・カスハラという言葉も意味も知っている:57.3%
・カスハラが増加していると思う:79.6%
・就業中に自身がカスハラ被害にあった:16.8%
・就業中にカスハラを見聞きした:36.3%
・カスハラ被害にあったことも見聞きしたこともない:40.3%
・カスハラ被害にあった場面
→対面(接客時など):51.2%、電話・メール:33.2%
・カスハラ行為
→威圧的な言動(声を荒げる、にらむ、物を叩くなど):63.8%、継続的・執拗な言動や行為(何度も電話、要求を繰り返す):28.9%
・カスハラ被害の対応方法
→管理職・上司が対応:40.3%、自分1人で対応:32.0%、同僚が対応:31.7%
・勤務先のカスハラ対策の実施
→行っている23.0%、行っているが不十分:27.6%、行っていない:49.3%
・行っている場合の内容
→基本方針の策定・周知:60.5%、対応マニュアルの整備46.4%
・対策をしているができていない理由
→対応のノウハウがない:46.7%、対応できる人材が不足している:37.2%
・カスハラ対策として効果があると思うもの
→対応マニュアルの整備:56.4%、基本方針の策定・周知:51.5%
業種別にみると、実際に被害にあった割合が一番多かったのは「農林漁業」(61.5%)で、見聞きしたことのある割合が多かったのは「学術研究、専門・技術サービス業」(53.2%)、両方ないのは「運輸業・郵便業」(52.5%)でした。
北海道や群馬県でも先だってカスハラ条例が制定されています。カスハラ対応を企業に義務付ける労働施策総合推進法の改正も閣議決定され、成立は目前です。企業にとっては、対応マニュアルや基本方針を策定するなどの対応が急がれます。
【東京都産業労働局「カスタマーハラスメントに関する都民調査」】
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/sangyo-rodo/onedrive
◆ハローワークにおけるAI活用
現在、日常的に様々なAIツールが活用されており、急速な広がりを見せています。厚生労働省は今般、ハローワークやハローワークインターネットサービスのAIの活用について、プロジェクトチームでの検討結果も踏まえた取りまとめを公表しています。そこでは、「AIで職員のすべての仕事を代替するわけではなく、あくまでハローワークサービスの利便性を高めるためのツール」という前提の下、今後の展望について示しています。
◆AI活用の全体像
AI活用の全体像としては、ハローワークにおいて職業紹介を行う職員向けとして、求職者に対する求人レコメンドや求人者に対する求人条件緩和案を提示し、職員がマッチングに活用すること、ハローワークインターネットサービスを利用する利用者向けには、求人や職業紹介に係る質問の自動受付・回答(チャットボットにより求職活動の進め方などの質問に応答し、必要なサイトの案内やハローワークへの誘導等を行う)に活用することとしています。
◆令和7年度に実証開始
令和7年度には、全国10カ所のハローワークで職員向けAI活用を実証実施し、ハローワークインターネットサービス上での求職者・求人者向けの生成AIを試行的に活用した「コンシェルジュ機能」を実証対象とするとしています。
AI活用によるリスクおよび課題なども踏まえつつ、今後、実証結果を踏まえ新たな展開が予想されるところですので、注視していきたいところです。
【厚生労働省「将来を見据えたハローワークにおけるAI活用について」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11601100/001478507.pdf
◆自爆営業とは?
自爆営業とは、従業員が会社の売上目標やノルマを達成するために、自腹で自社の商品を購入する行為を指します。例えば、郵便局員が年賀はがきを自腹で購入するケースや、コンビニの従業員が売れ残った商品を買い取るケースが典型的です。従業員の経済的損失や精神的苦痛につながるものとして、近年問題視されています。
企業が従業員に対して売上目標やノルマを設定すること自体は違法ではありません。しかし、その達成方法や強要の度合いによっては、民法や労働関係法令上の様々な問題が生じ得ます。
◆問題となる事例
厚生労働省もこうした自爆営業等を念頭に、注意を呼びかけるリーフレット「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点」を公表しています。ここでは、問題となる事例として以下が挙げられています。
・使用者としての立場を利用して、労働者に不要な商品を購入させた
・労働者に対して自社商品の購入を求めたが、労働者がこれを断ったため、懲戒処分や解雇を行った
ほかにも、注意が必要なケースとして以下が挙げられています。
・従業員ごとに売上高のノルマを設定しており、ノルマ未達成の場合には人事上の不利益取扱いを受けることを明示していたところ、ノルマ達成のため、労働者自身の判断で商品を購入した
・現実的に達成困難なノルマを設定し、ノルマ未達成の場合には人事上の不利益処分を行うこととしている
自爆営業は従業員に大きな負担を強いる行為です。行き過ぎたペナルティや買取り強要が生じないよう、周知・管理の徹底に努めましょう。
【厚生労働省「労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001462034.pdf
5月8日、衆議院本会議にて、改正労働安全衛生法及び作業環境測定法が可決、成立しました。多様な人材が安全に、かつ安心して働き続けられる職場環境の整備を推進するため、下記の措置を講ずるとされています。施行日は、別に記載のあるものを除き、令和8年4月1日です。
◆改正の概要
1.個人事業者等に対する安全衛生対策の推進
既存の労働災害防止対策に個人事業者等も取り込み、個人事業者等による災害の防止を図るため、
① 注文者等が講ずべき措置(個人事業者等を含む作業従事者の混在作業による災害防止対策の強化など)を定め、併せてILO第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)の履行に必要な整備を行う。〔一部は令和9年4月1日施行〕
② 個人事業者等自身が講ずべき措置(安全衛生教育の受講等)や業務上災害の報告制度等を定める。〔一部は令和9年1月1日、同4月1日施行〕
2.職場のメンタルヘルス対策の推進〔公布後3年以内に政令で定める日施行〕
ストレスチェックについて、労働者数50人未満の事業場についても実施を義務化。
3.化学物質による健康障害防止対策等の推進
① 化学物質の譲渡等実施者による危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則を設ける。〔公布後5年以内に政令で定める日施行〕
② 化学物質の成分名が営業秘密である場合に、一定の有害性の低い物質に限り、代替化学名等の通知を認める。
③ 個人ばく露測定について、作業環境測定の一つとして位置付け、作業環境測定士等による適切な実施の担保を図る。〔令和8年10月1日施行〕
4.機械等による労働災害の防止の促進等
① ボイラー、クレーン等に係る製造許可の一部(設計審査)や製造時等検査について、民間の登録機関が実施できる範囲を拡大。
② 登録機関や検査業者の適正な業務実施のため、不正への対処や欠格要件を強化し、検査基準への遵守義務を課す。〔令和8年1月1日施行〕
5.高齢者の労働災害防止の推進
高年齢労働者の労働災害防止に必要な措置の実施を事業者の努力義務とし、国が当該措置に関する指針を公表。 等
【厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」】
https://www.mhlw.go.jp/content/001449334.pdf
近年の生成AI技術の進化は、人事業務全般の効率化と高度化を急速に促進しています。採用面接時の動画を分析するものなどもあり、これからも生成AIの採用活動への導入が進むといわれています。
◆オンライン/録画面接の注意点
コロナ禍以降、オンライン面接(Web面接)や録画面接が広がってきていますが、注意しておきたい点があります。
① カメラ越しでは身振り手振りや微妙な表情変化・雰囲気が捕捉困難であり、評価精度が低下します。対面に比べ応募者の人柄判断が表面的になりやすくなります。
② 機材や通信環境に依存するため、接続トラブルや音声途切れ・映像フリーズが面接の質を低下させます。オンライン面接では、タイムラグが会話リズムを乱すため、面接の質を低下させます。ツール操作に不慣れな面接官/応募者による進行遅延の発生は、印象が悪くしがちです。
③ 緊張感が高まり、機器操作への不慣れが応募者のパフォーマンスを阻害します。2022年の調査ですが「マイナビ学生就職モニター調査」によれば、45.4%の学生が録画面接に苦手意識を持っています。録画面接というだけで忌避される可能性があります。
④ 録画面接では特に、AI解析時のアルゴリズムバイアスやデータ管理問題がリスク要因となります。
以上のことから、対面時に比べ情報が制限され人物の本質を見極めにくい、トラブル要素が多いことなどから、重要な判断には対面による面接が必須と考えたほうがよいでしょう。
◆そもそも採用の基準は大丈夫?
しかし、こうした技術的なこと以前に、自社での採用の基準や職場・職務の状況を意識した質問事項がしっかりと作成されており、加えてそれらを面接担当者全員が共通認識として共有できていることは、自社にマッチした人材を採用するための大前提です。採用の精度を上げるためにはソフト面からの見直しも必要です。
◆「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン
厚生労働省では、全国の大学生等を対象に、多くの新入学生がアルバイトを始めるこの時期に、自らの労働条件の確認を促すことなどを目的としたキャンペーンを実施し(4月1日~7月31日まで)、大学等での出張相談やリーフレットの配布などを行っています。そこでは、「勝手にシフトが変わっている!」「代わりにバイトする人を見つけられないとやめられない」「忙しいと休憩時間がもらえない!」など、“おかしい”と思ったら、まずは労働基準監督署等に相談することを呼びかけています。企業としても、今一度、アルバイトを雇う際の労働条件について確認しましょう。
◆書面で労働条件を示す
①労働契約の期間、②契約期間がある場合、更新の有無、更新上限、更新する場合の判断基準など、③仕事の場所、内容、変更の範囲、④始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替のローテーション、⑤バイト代の決め方、計算と支払方法、支払い日(最低賃金を下回らない)、⑥退職時・解雇時の決まり、⑦有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、無期転換申込みに関する事項・無期転換後の労働条件など。
なお、労働者が希望した場合は、メール等(印刷できるもの)による明示も可能です。
◆学業とアルバイトが両立できるようなシフトを設定する
学生の本分は学業であることを踏まえたシフト設定が必要です。また、採用時に合意したシフト変更等について、事業者が一方的に変更を命じることはできません。
◆アルバイトの労働時間も適切に把握する
労働時間の管理が必要なのはアルバイトであっても変わりません。
◆商品を強制的に購入させることや、一方的にその代金を賃金から控除することは禁止
公序良俗に反して無効となりますし、不法行為として損害賠償が認められる可能性があります。
◆遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることは禁止!
遅刻等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることはできません。また、遅刻を繰り返すなどの規律違反行為への制裁として、無制限に減給することはできません。
【厚生労働省「令和7年度「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施します」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_54645.html
2024年の通常国会で成立した「育児・介護休業法」と「次世代育成支援対策推進法」の改正法は、2025年4月1日から段階的に施行されています。内容は多岐にわたりますが、ここでは4月1日に施行された企業の公表義務に関する改正をご紹介します。
◆育児・介護休業法―育児休業取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大
従来は、従業員数1,000人超の企業に育児休業等の取得状況を公表することが義務付けられていましたが、4月1日から、従業員数300人超の企業に公表が義務付けられることとなりました。
公表内容は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における男性の「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかの割合を指します。
育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する以下の休業のことです。
・育児休業(産後パパ育休を含む)
・法第23条第2項(3歳未満の子を育てる労働者について所定労働時間の短縮措置を講じない場合の代替措置義務)または第24条第1項(小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務)の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置を講じた場合は、その措置に基づく休業
◆次世代育成支援対策推進法―行動計画策定・変更時に育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け
従業員数100人超の企業が4月1日以降に行動計画を策定または変更する場合には、次のことが義務付けられます(従業員数100人以下の企業は、努力義務の対象です)。
・計画策定時の育児休業取得状況(男性労働者の「育児休業等取得率」または男性労働者の「育児休業等および育児目的休暇の取得率」)や労働時間の状況(フルタイム労働者1人当たりの各月ごとの法定時間外労働および法定休日労働の合計時間等の労働時間(高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者にあたっては、健康管理時間))の把握等(PDCAサイクルの実施)
・育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定
【厚生労働省「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法の2024(令和6)年改正ポイント」】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/point02.html
◆研究会の目的
厚生労働省は5月1日に「第1回 労働基準法における「労働者」に関する研究会」を開催し、労働者性の判断基準の在り方などの検討を開始しました。この研究会では、「労働基準関係法制研究会報告書(令和7年1月8日公表)」において、労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年)の作成から約40年が経過し、働き方の変化・多様化に必ずしも対応できない部分が生じており、この間に積み重ねられた事例・裁判例等を分析・研究し、学説も踏まえながら見直しの検討をすることや、国際的な動向も視野に入れながら総合的な研究を行うことの必要性について指摘がなされ、同省において専門的な研究の場を設けて総合的な検討を行うべきこととされました。
◆検討事項
この研究会では、次の事項について調査・検討を行うこととされています。
① 労働基準法上の労働者性に関する事例、裁判例等や学説の分析・研究、プラットフォームワーカーを含む新たな働き方に関する課題や国際的な動向の把握・分析
② 労働基準法上の労働者性の判断基準の在り方
③ 新たな働き方への対応も含めた労働者性判断の予見可能性を高めるための方策
◆「労働者」の判断基準
現在、労働基準法上の「労働者」に当たるか否かについては、以下の2つの基準で判断されることとなっています。
・労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち、他人に従属して労務を提供しているかどうか
・報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているかどうか
この2つの基準を総称して「使用従属性」と呼ばれています。
近年、配達員やアイドル、劇団員、英会話講師等が労働者として認められる裁判例があり、この研究会の議論により条件がどのように見直されるのか、今後の動向が注目されます。
【厚生労働省「労働基準法における「労働者」に関する研究会 第1回資料」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57506.html